2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21340140
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
徳丸 宗利 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 教授 (60273207)
|
Keywords | 太陽風 / 惑星間空間シンチレーション / 宇宙天気 / 太陽活動 / 太陽圏 |
Research Abstract |
1.改良された惑星間空間シンチレーション(IPS)システムによる太陽風観測 本研究では、第24太陽活動極小期における特異な太陽風の構造が、太陽活動の上昇に伴って如何に発展してゆくかを、名大STE研の多地点IPSシステムによる太陽風観測から明らかにしようとしている。昨年までにIPSシステムの改良を行って豊川・富士・木曽観測所の3地点で同時にIPSデータを取得できるようになった。今年度は、同システムを使って4~11月の期間に3地点IPS観測を実施し、得られたデータから太陽風速度の分布を決定した。その結果、極域の高速風が衰退し、低速風が全緯度で支配的になっていることが判明した。これは2009年に見られた分布とは大きく異なり、急激に太陽風構造が変化したことを示す。また、この分布は太陽極大期に似ているが低緯度に小規模な高速風領域が存在するなど過去の極大期とは異なる点があることが判った。 2.太陽風構造の長期変動に関する研究 1997~2009年に取得されたSTE研IPS観測データを解析し、太陽風速度と密度ゆらぎΔNeの分布の長期変動を調べた。その結果、太陽風速度分布が太陽活動度に依存して変化しているのに対し、ΔNeの分布は明瞭な太陽活動依存性を示さず、むしろサイクル23後半から全緯度でΔNeの低下傾向があることが判った。このことは太陽風の運動量フラックスが全球的に大きく低下していることを示し、太陽圏全体が収縮していることを示唆する重要な発見である。また、速度が350km/s以下の太陽風では著しく△Neが減少していることも判明した。これは、この超低速風の流源の状態が他とは異なることに起因すると推定される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今サイクルにおける太陽風構造が予想以上に急速に変化していることが、今年度の観測から判明した。当初は、前サイクルの極小期が長引き、その後の太陽活動の上昇も弱いので、より緩やかな変化が予想されたが、本研究の結果はこれを覆すものである。また、太陽風密度ゆらぎΔNeの全球的な減少や速度350km/s以下の低速風の特性が他とは異なることを発見した。本成果は論文にまとめて投稿し、レビュワーから好意的なコメントを得ている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究で判明した太陽風密度ゆらぎΔNeの低下が今後も継続すると、IPS観測に影響がでてくる可能性がある。その対策として、観測システム(特に富士・木曽アンテナの低雑音増幅器)の感度を改善させる必要がでてきた。また、本研究で取得するデータについてIBEX衛星やVoyager探査機の研究チームから共同研究の下で使いたい旨の連絡がきている。このため、本研究課題の最終年度前年度に、より大型の科研費を申請した。
|