Research Abstract |
初年度である本研究は,中海の湖水中のRa(ラジウム)とその娘元素(Rn : ラドン)の分布とその特徴を得ることを目的として,ラドンの分析法とその挙動,およびラジウムの季節変動を検討した。潮汐作用や風力で極めて短時間で変化する湖水の循環パターンを捉えるためには,現地でのデータの取得が欠かせない。ラドンの濃度測定について,従来の採水試料の液体シンチレーションカウンタを利用した測定方法に代わって,現地でラドン核種の分析可能な静電捕集式ラドンモニタを新たに購入して分析を行った。ラドンの親核種であるラジウムはγ線分析装置を利用した。連続観測で得た測定結果は,国土交通省の水質・気象・水文観測結果と比較検討することができた。以下は今回得られた主な結果である。 (1 )^<228>Ra(t_<1/2>=5.7年)と^<226>Ra(t_<1/2>=1600年)は,半減期が異なるため,その放射能比は湖水の循環速度が関係していることが明確になった。(2) 対流が阻害されているところでは,^<228>Raの存在量が多くなる。したがって,流入・流出の大きい水域では^<228>Ra/^<226>Ra比が低くなることが明らかとなった。(3) 中海湖心部における表層水中のRnは,ほぼ一定した濃度(約40Bq/m^3)を示しているが,底層水中では表層水中より約2倍の濃度の存在が確認された。しかし,濁度が高いときにはRn濃度は高くなった。すなわち,気象条件によって湖底堆積物が巻上げられたとき,湖底間隙水中のRnが底層水中へ拡散されたことによるものである。(4) 陸域に近いところでは,で底層水中のラドン濃度の急な変化が湧水の影響によって起こることが確認された。(5) 汽水湖の滞留時間と比較する有孔虫については,底層水の動きやすさが関係している可能性がラジウム比にはみられるが,Rn濃度からみると大きな違いは確認されていない。この詳細については,さらに次年度に検討したい。
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