2010 Fiscal Year Annual Research Report
摩擦発熱による粘土鉱物の脱水が地震すべりに与える効果の解明
Project/Area Number |
21340150
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
氏家 恒太郎 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 准教授 (40359188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 昭人 京都大学, 理学研究科, 助教 (90324607)
平野 伸夫 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (80344688)
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Keywords | 地震すべり / 摩擦発熱 / 高速せん断摩擦 / 粘土鉱物 / 流体 |
Research Abstract |
前年度に実施したすべり速度1.3m/sでの高速せん断摩擦実験とその後の微細構造解析・化学組成分析により、2つの特徴的微細構造、すなわち断層内水蒸気爆発に伴う火山豆石類似の構造と断層ガウジの流動化に伴う粒子の逆級化構造が見いだされた。本年度ではこれらの微細構造が形成される条件と摩擦強度低下の関係を明らかにするために、南海付加体分岐断層から採取した試料を用いて乾燥・湿潤条件下、すべり速度0.13-0.013m/s、垂直応力1.0MPaでせん断摩擦実験を行った。実験後試料を回収し、光学顕微鏡とSEM-EDSによる微細構造解析・化学組成分析を実施した。その結果、火山豆石類似の構造は摩擦発熱の指標となり得るが、断層の摩擦強度低下の指標には必ずしもなり得ないことが判明した。これは摩擦発熱によって粘土鉱物脱水由来の水が気化する際に発生するガス圧が、断層内に留まれるか、拡散できるかによる。一方、粒子の逆級化構造は高速せん断時のみ発生し、断層ガウジの流動化に伴う摩擦強度低下の指標になり得ることが明らかとなった。これは、粒子の逆級化構造形成に不可欠な分散圧力の発生が、せん断歪み速度の2乗に比例することを反映している。以上の成果を論文に公表すると同時に、国内外の学会で発表を行った。また、四万十付加体に露出する断層すべり集中帯の調査も継続して行い、微細構造解析・化学組成分析を開始した。これまでのところ火山豆石類似の構造、粒子の逆級化構造とも見いだされていない。前者に関しては、調査を行っている断層の形成深度が深いため、粘土鉱物脱水由来の水の気化に伴う断層内水蒸気爆発が起こり得ないことを反映していると考えている。そこで、次年度以降は粒子の逆級化構造に焦点を絞って断層すべり集中帯調査及び微細構造解析・化学組成分析をすすめていく予定である。
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