2011 Fiscal Year Annual Research Report
閉鎖系海域に出現する貧酸素水塊が低次生態系に与える影響
Project/Area Number |
21340153
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
松岡 數充 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 教授 (00047416)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中田 英昭 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 教授 (60114584)
山口 仁士 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (10359143)
梅澤 有 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 助教 (50442538)
和田 実 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 准教授 (70292860)
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Keywords | 大村湾 / 貧酸素水塊 / 栄養塩溶出 / セディメントトラップ / 渦鞭毛藻 / 珪藻 / 植物プランクトン / 表層堆積物 |
Research Abstract |
湾口部で潮流によって鉛直混合した海水は、9月初めまでは主に湾内中層に流入し、それ以降は、湾内底層に流入する傾向が強くなり,貧酸素水塊の形成に寄与した.さらに湾内底層に流入する方向の流れが卓越するようになると、湾内底層の貧酸素水塊は湾奥から湾東部に移動し、湾口に近い方から消滅し始めた.また,底層に溶存酸素濃度が相対的に高い水塊が流入するため、底層の貧酸素水塊が一時的に湾内中層に浮上する現象が認められた。 夏季-秋季の湾中央部海底表層ではINT還元活性に基づく酸素消費速度は0,2~0.7μL O_2/mg堆積物/時間にあり、8月に最大値を示した。すべての期間を通じて非生物的なINT還元活性から推定した化学的酸素消費は全酸素消費活性の6割以上を占め、堆積物中の硫化物など還元性物質が底質の酸素消費に大きく寄与していると判断された。全酸素消費活性はクロロフィル量と極めて高い相関を示し,湾中央部水柱での一次生産が底質の酸素消費に多大の影響を与えていると考えられた。 貧酸素環境ではリン酸溶出フラックスは水温が高く,嫌気的条件で増加した。ケイ素は高水温条件では溶出量が増えたが、酸素濃度条件では有意な変化がなかった。これらの結果は夏季に貧酸素水塊が発達する中央部では、堆積物間隙水中の窒素とリン濃度がケイ素に比べて高まるのに対して、津水湾では河川水の影響もあって、相対的にケイ素濃度が高まる傾向を示唆した。 メソコスム実験で弱攪拌環境ではDactyliosolen flagilismusやLeptocylindrus danicusのような珪藻は沈降した。底層に光が入らない環境では珪藻は死滅し、その有機物がバクテリアによって分解される事で貧酸素水塊の形成に寄与していた。光が十分ある環境では弱攪拌の環境に適したPseudo-nitzschia spp.が増殖した。また,垂直移動能を備えたHeterocapsa circularisquamaは貧酸素化により溶出してきた栄養塩とくにリン酸塩を他のプランクトンよりも優位に獲得したことにより優占したと考えられた。
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