2010 Fiscal Year Annual Research Report
窒素同位体と食物網の構造から評価する北方域水圏生態系の動態
Project/Area Number |
21340163
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
南川 雅男 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 教授 (10250507)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 隆史 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 准教授 (90240639)
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Keywords | 河川水系 / 富栄養化 / 石狩川 / 窒素収支 / 脱窒 / 窒素同位体 / 栄養段階 |
Research Abstract |
石狩川水系、環境変化のおこっている海岸域として三陸域の潮間帯、富山県のダム湖を取り上げ、観測と試料採取、および一部の分析を行った。本流と支流(当別川、夕張川、豊平川)、および茨戸湖などの三日月湖において、窒素の動態を観測をもとに解明し、富栄養化の影響が下流の生物系に及ぼす影響を解析した。昨年より石狩川での観測調査を継続した。三陸海岸の潮間帯では、試料採取と生態系の構造解析のために生態調査を実施した。石狩の試料については炭素窒素同位体と、インキュベーションによる脱窒活性の実験を毎月行った。これまで得られた結果は以下の通りであるが、学会で報告するとともに、論文を投稿し、一部は印刷中となっている。 (1)底泥の脱窒機能が最も高いのは、三日月湖であり、硝酸濃度が高い季節(冬期)ほど潜在的な活性が高い。 (2)河川水の脱窒能は硝酸を添加して培養してもそれほど高い脱窒機能を示さず、河川水自体は基質の有機物の制限により、底泥よりも低いことがわかった。 (3)石狩川の河川水中の懸濁粒子は、そのd15NとC/N比には逆相関があり、粒子の窒素同位体組成は水性微生物によって重く、陸生植物の破砕物によって軽くなる傾向を示した。 (4)潮間帯の生物群について胃内容物から食物連鎖の構造を明らかにした。 富栄養化の程度が異なる富山県下の湖沼、ダム湖10か所で底泥、懸濁粒子、生物試料を定期的に採集し、窒素同位体、胃内容物などの分析を行った。同じ地域でありながら、各水域の同種の魚類の同位体組成はCNともに大きな違いがあり、各点で食物連鎖の構造が異なることと、窒素代謝に大きな違いがあることが解かった。これらの違いは水系の所在地の海抜や、流入河川の栄養塩濃度、水域の富栄養化の程度の違いによって生じていると推定され、今後検討事項となった。
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Research Products
(12 results)