2011 Fiscal Year Annual Research Report
隕石衝突によって初期地球へ供給された有機物の化学進化についての実験的研究
Project/Area Number |
21340164
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三村 耕一 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (80262848)
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Keywords | 隕石 / カルボン酸 / 生命の起源 / 衝撃波 / 化学進化 |
Research Abstract |
本研究の目的は「地球に落ちた地球外物質によってどのような有機物が供給され,その後どのように化学進化したか?」を探ることである。平成23年度は,隕石中と同程度のカルボン酸存在度に調整したカルボン酸+蛇紋岩混合粉末(模擬隕石)とマーチソン隕石の2種類の出発物質を使って衝撃実験を試みた。しかしながら、平成23年度遂行した実験の一部について再実験の必要が生じたため、この再実験を平成24年度に遂行した。 平成23年度の模擬隕石を用いた実験では,衝突させる弾丸の厚さを1 mm,2 mm,4 mmと変化させ,衝撃圧力に対するカルボン酸の組成変化を調べた。この実験により,カルボン酸が出発物質の5%程度になる衝撃圧力は、1 mm,2 mm,4 mmの弾丸について,それぞれ30 GPa,25 GPa,20 GPa程度であることが明らかになった。しかし、実験データが少ないため(特に、1 mm弾丸と4 mm弾丸)、実験結果の信頼度に問題があることが、他の研究者によって指摘された。そこで、1 mm弾丸と4 mm弾丸について再実験を行ったところ、平成23年度の実験結果とほぼ同様の結果を得るに至った。これにより、衝撃反応によってカルボン酸が分解するのは,衝撃波によって高温高圧になっている時であるという平成23年度の結論が支持された。さらに、弾丸厚さの違いに起因する衝撃持続時間の違い、衝撃温度、カルボン酸の分解率から反応速度論の知見からの議論も試みた。なお、衝撃持続時間は、反応容器と弾丸の材質(SUS 304)と弾丸速度のデータから、0.3μsから1.6μsと見積もられた。さらに、衝撃温度については、試料内を衝撃波が繰り返し反射することによって圧力と温度が上昇するというリングアップを考慮して、330 Kから570 Kと算出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
隕石を模倣したカルボン酸・蛇紋岩粉末試料とアミノ酸・蛇紋岩粉末試料への衝撃実験は終了したが,彗星を模擬した衝撃実験ができていない。これは,水を含む出発物質を封入することのできる衝撃反応容器を開発できていないためである。
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Strategy for Future Research Activity |
彗星を模した出発物質の衝撃実験を行えるよう,液体用衝撃反応容器の開発を行う。新たに開発した反応容器を用いて液体窒素温度環境でのアミノ酸・水混合試料の衝撃反応を調べる。
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Research Products
(3 results)