2010 Fiscal Year Annual Research Report
電子動力学法の開発とその時間分解分子イメージングへの応用
Project/Area Number |
21350005
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
河野 裕彦 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70178226)
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Keywords | 電子波束 / 時間依存自然軌道 / 光イオン化 / 反応制御 / 分子イメージング / 化学ポテンシャル / 電子相関 / Stone-Wales転位 |
Research Abstract |
電磁場と電子との1体の相互作用から多電子の全系にどのようにエネルギーが流れていくかを定量化する手法を開発し、電子相関を考慮した分子イメージング理論の基礎固めを行った。具体的には、多配置波動関数が従う運動方程式を導出し、電子ダイナミクスに寄与する分子軌道(自然軌道)を定量化する「瞬間的な自然軌道φ_j(t)の電子相関エネルギーを含んだ時間依存化学ポテンシャル」と「レーザー電場から直接φ_j(t)が得るエネルギーS_j(t)」を定義した。外部レーザーに対する応答として、断熱的および非断熱的な応答が存在することを確認し、後者の中でも電子間エネルギー交換によってε_j(t)>S_j(t)を満たす「アクセプタ軌道」に分類される軌道が分子のイオン化において重要であることを示した。H_2やN_2分子の近赤外パルスによるイオン化において、励起状態が大きな役割を演じていることを明らかにした。 また、光励起による反応制御の機構解明を目的とし、強レーザー場によって誘起される初期振動ダイナミクスを時間依存断熱状態法に基づいた第一原理的分子動力学計算により求め、C_<60>ではパルス列を使うことによって特定の振動モードを選択的に励起でき、そのエネルギーが数ps程度で他のモードに流入することを示した。解離につながるStone-Wales転位を起こすC=C結合周りの6つの炭素原子の運動エネルギーの時間変化を調べたところ、100fs程度の時間幅をもって約500fsの周期で増減を繰り返し、増加したエネルギーが転位の遷移状態方向への運動を誘起できた場合にだけ、転位が起こることを明らかにした。
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