2009 Fiscal Year Annual Research Report
開殻分子系の開殻因子、荷電・スピン状態を制御因子とする新規非線形光学物質の設計
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21350011
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中野 雅由 Osaka University, 基礎工学研究科, 教授 (80252568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 浩二 独立行政法人産業技術総合研究所, 光技術研究部門, 研究グループ長 (20356637)
久保 孝史 大阪大学, 理学研究科, 教授 (60324745)
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Keywords | 開殻系 / ジラジカル / フェナレニル / 非線形光学 / 超分極率 / Ab initio法 / 密度汎関数法 / グラフェン |
Research Abstract |
本年度は、当初の研究計画に沿って、実験値に基づくジラジカル因子の決定を行った。これに用いた理論式は、2サイトジラジカル分子モデルのvalence configuration interaction法により算出した励起エネルギーの解析式に基づいて導出されたもので、二光子遷移許容の高い一重項状態(g対称性)の励起エネルギー(EC_<S(g)>)、一光子遷移許容の低い一重項状態(u対称性)の励起エネルギー(E_<S(u)>)、三重項状態(u対称性)の励起エネルギー(E_T)の実測値によりジラジカル因子yを表す形たなっている。これらの励起エネルギーは一光子吸収、二光子吸収、ESR実験により得ることが可能である。研究分担者の久保により合成された安定な一重項ジラジカル種のジフェナレニルラジカル化合物について、二光子吸収測定の結果等をもとにこの理論式を用いてジラジカル因子を求めた。また、他のジラジカル性を持つと期待される複数の化合物に関してもこれらの測定を行い、また文献からの実測値をもとにyを計算し、UHF法の自然軌道の占有数から計算により求めたジラジカル因子(理論値)に対してプロットを行った。その結果、実測値から求めたジラジカル因子と理論から求めた値との間に強い相関が認められた。この結果は、開殻分子の結合特性を特徴づける最も重要な因子であるジラジカル因子の実験値による推定を可能とする方法を初めて示したものである。今後、さらに多くの化合物に関して、この関係式が成り立つかを検討して行上予定である。また、グラフェン等を含む縮環化合物のジラジカル性やマルチラジカル性と三次非線形光学物性(第二超分極率γ)との相関について、スピン分極型密度汎関数法により解析し、HOMO-LUMOに関して中間ジラジカル性をもつ場合にγが極大を示すだけでなく、HOMO-1-LUMO+1に関して中間ジラジカル性を持つ場合にも極大を示すことが判明した。この結果は、グラフェン系のマルチラジカル性が第二超分極率の測定結果に影響を及ぼすことを示唆しており、マルチラジカル性の観測への方法の基礎となると期待される。
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Research Products
(51 results)