2011 Fiscal Year Annual Research Report
イオンクラスター分光による,不飽和炭化水素の求核付加・置換反応メカニズムの解明
Project/Area Number |
21350016
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井口 佳哉 広島大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (30311187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江幡 孝之 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70142924)
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Keywords | クラスター / イオン / 質量分析 / 赤外分光 / エレクトロスプレー / クラウンエーテル / イオントラップ |
Research Abstract |
本研究の目的は,質量分析計と赤外~紫外レーザーを利用したイオンクラスター分光により,求核付加・置換反応の反応メカニズムを分子レベルで明らかにすることである。この目的に対し23年度は,エレクトロスプレーイオン化法を利用した新イオン源を我々の実験に利用することを試みた。このイオン源を使用することにより,これまでイオン化が困難なために我々の装置で研究することができなかった,溶液中の様々なイオンに対して研究を展開することをめざした。 まず最初に,エレクトロスプレーを用いた第一の実験として,エレクトロスプレーにより生成させたイオンからの蛍光を検出し電子スペクトルを得ることを試みた。エレクトロスプレーイオン源はProxeonのnanoelectrosprayを使用し,これを市販の蛍光分光光度計の中に装着した。蛍光性のイオン(Methylene Blue, Rhodamine等)を溶解させたメタノール溶液をエレクトロスプレーにより噴霧し,大気中に生成したイオンに励起光を照射して,イオンからの蛍光検出を試みた。その結果,溶液中のイオンからの蛍光を感度よく検出することに成功した。イオン源から蛍光検出のポイントまでの距離を変化させると,蛍光スペクトルの極大位置がシフトした。これはイオンの周囲に存在する溶媒が大気中を飛行する間に蒸発していく過程に由来していると結論づけられる。またもう一つの実験として,エレクトロスプレーと質量分析計を組み合わせた実験をローザンヌ連邦工科大学との共同研究で行った。この実験では有機反応における触媒として利用されているアルカリ金属イオン・クラウンエーテル錯体をエレクトロスプレーで大気中に取り出し,さらに真空中に導入してレーザー分光によりその構造を明らかにすることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新イオン源としてのエレクトロスプレーを利用することにより,溶液中の金属イオンおよびそのクラウンエーテル錯合体を安定に真空に取り出すことができることがわかった。これにより,これからは溶液中でイオンが関与する様々な反応系を真空中での研究対象として取り扱うことができるため,今後の研究の大きな発展が期待できるため。
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Strategy for Future Research Activity |
エレクトロスプレー法を分光のためのイオン源として利用する試みに成功したので,今後はこのイオン源を用いて,溶液中での反応を真空中に導入し,質量分析計とレーザー分光を用いた精密測定によりその反応素過程や光化学に関する情報を得たいと考えている。
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Research Products
(4 results)