2011 Fiscal Year Annual Research Report
近接場光励起による金属表面の局所電子ダイナミクスの理論
Project/Area Number |
21350018
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
信定 克幸 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 准教授 (50290896)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安池 智一 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (10419856)
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Keywords | 局所的電子構造 / 近接場光 / 電子ダイナミクス / 金属表面 / エネルギー散逸 |
Research Abstract |
これまでに固体表面吸着種の非平衡電子状態を記述するための量子開放系クラスター理論を開発し、その理論に基づく金属表面吸着原子モデル系の振動核波束ダイナミクスの数値計算を行ってきた。本年度は上記理論を実在系表面吸着原子系に適用することを目的として、量子開放系クラスター理論を第一原理電子状態計算に実装した。並列化計算を含む効率的数値計算アルゴリズムの導入などにより、実在系表面吸着系に対しても数値計算を実行することが可能となった。具体的な系としては、Cs/Cu(111)系の光励起過程のメカニズム解明を行った。通常のクラスターモデル計算と異なり、我々の量子開放系クラスターモデル理論に基づけば、電子的緩和に伴う寿命を含む励起状態のより正確な非平衡電子状態計算を行うことが可能である。また、実験グループと共同でCs/Cu(111)系の光励起ダイナミクスの詳細な解明を行った。実験結果とも定性的に良い一致を示し、これまで不明であった光励起ダイナミクスの素過程を明らかにした。 ピラジン-ナトリウムクラスターを対象として表面増強ラマン散乱(SERS)の機構解明を行った。通常、SERSのメカニズム解明においては電場増強の役割が強調されることが多いがその本質的理解は十分ではない。ピラジン分子の近傍にナトリウムクラスターが存在すると、ナトリウムクラスターの共鳴電子励起の影響でピラジン分子のラマン散乱の増強が起こることを見出した。このメカニズムに基づけば、通常は弱いラマンスペクトルしか得られない系においても、隣接するクラスターのサイズや化学組成を制御することにより、ラマン散乱の増強を起こすことが可能になる。 更に実験グループと共同で金チオラートクラスターの超高速電子緩和過程の詳細を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り表面吸着系を記述するための量子開放系クラスターモデル理論の開発が順調に進み、実在系を対象とした第一原理計算に関する成果報告も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記したように当初の研究計画は順調に進展しており、量子開放系クラスターモデル理論に基づく第一原理計算の適用範囲を更に拡大する。また本研究を通じて電子ダイナミクス法の大規模計算の重要性を認識したため、電子ダイナミクス法の大規模並列化プログラミングも同時に進める予定である。
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Research Products
(11 results)