2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21350019
|
Research Institution | National Institutes of Natural Sciences Okazaki Research Facilities |
Principal Investigator |
江原 正博 National Institutes of Natural Sciences Okazaki Research Facilities, 計算科学研究センター, 教授 (80260149)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小杉 信博 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 教授 (20153546)
|
Keywords | 内殻電子過程 / 電子状態理論 / 共鳴状態 / 脱励起過程 / 表面光化学 |
Research Abstract |
本研究では、内殻電子過程を精密に記述する電子状態理論を開発し、最先端の実験に応用することによって、内殻電子過程の本質を明らかにし、従来の価電子を中心とした研究では得ることが難しかった物理現象や化学概念の理解を深めることを目的としてを研究を行った。 1.内殻電子状態の分子理論の開発:多参照理論であるActive space法を内殻電子過程の観点から理論を発展させた。構造緩和を研究するためにActive space法の解析的エネルギー勾配法を開発し、プログラムの実装を行い、CNC等の開殻電子系に系統的に応用した。 2.スピン軌道分裂と振動スペクトル:分子場分裂やスピン軌道分裂に基づく複雑な内殻励起スペクトルの解析や、第三周期元素の内殻電子過程における相対論的効果について研究した。SO_2のS2_<p-π>^‡励起状態には分子場分裂、スピン軌道分裂、振動構造があり、複雑なスペクトルを示す。理論計算から対称伸縮振動方向に構造変化が大きく、振動構造は主に対称伸縮によるものであることを示した。また、第三周期元素を含む分子、SiH_4,PH_3,H_2S,OCS,CH_3Clの内殻イオン化エネルギーについて検討し、スカラー相対論効果が4~9eV程度あることを明らかにした。相対論的効果は、軌道近似と電子相関を考慮した場合で0.15~0.4eV程度の違いがあり、相対論的効果と電子相関の効果が相殺することを示した。 3.内殻二電子イオン化状態:2光子の光電子分光により、二電子イオン化状態を観測することにより、緩和エネルギーや原子間緩和エネルギーを実験的に評価できることを理論的に示した。
|