2010 Fiscal Year Annual Research Report
世界記録に挑戦する化合物:最長の炭素―炭素結合と超原子価
Project/Area Number |
21350022
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 孝紀 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (70202132)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 憲秀 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (20222268)
河合 英敏 北海道大学, 大学院・理学研究院, 助教 (50322798)
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Keywords | 長い結合 / 共有結合 / ジラジカル / X線構造 / 超原子価 |
Research Abstract |
炭素-炭素共有結合は有機化学に於けるもっとも重要かつ基本的な概念を構築する。反応有機化学においては、「いかに巧みに炭素-炭素共有結合を形成させるか」が、合成有機化学においては、「炭素-炭素結合形成反応を、どのように利用してターゲット化合物へ導くか」が、構造有機化学においては、「ターゲット化合物の特異な構造における共有結合の局在性-非局在性」が常に中心的な研究課題として取り上げられている。すべての有機化合物は共有結合によって形作られている。それほどまでに普遍的なものでありながら、結合長と結合解離エネルギーの関係など、その本質の完全な理解の為に、解明されるべき問題が残されている。たとえば、3中心2電子結合は、炭素以外の低周期典型元素化合物では、ボランを例にとるまでもなく比較的多くの例が報告されている一方、炭素-炭素結合にもう一原子が挿入された形の3中心2電子結合に関する実験的研究は非常に限られている。 嵩高いアリール基が6つ置換した炭素-炭素結合は高いHOMOを持ち、この結合にプロトンが付加した陽イオン種は、ボラン2量体と等電子的な3中心2電子結合を形成する可能性がある。H22年度には、その架橋原子の非局在化といった構造的特徴が、炭素-炭素間距離とどのように相関するかを総合的に判断する目的で、これまでのデータを詳細な解析に基づく考察を行った。それによれば、炭素-炭素間距離が短いほど、架橋原子の移動に必要な活性化エネルギーが小さくなることから、さらに距離を近づけることで、非局在型の3中心2電子結合が発生できることが示された。これを基に、シクロファン型に固定された新たな、さらなる分子設計へと展開した。ビフェニル-2,2'-ジイルジアクリジンのプロパルジル化を経由する環化により、低収率ながらシクロファン構造へ導かれることが見出された。その効率化と他の骨格への応用が今後の検討課題である。
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Research Products
(5 results)