2009 Fiscal Year Annual Research Report
高周期典型元素をスピン中心とする常磁性化学種に関する研究
Project/Area Number |
21350023
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
一戸 雅聡 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 准教授 (90271858)
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Keywords | 常磁性化学種 / 開殻分子 / 高周期典型元素 / シリルラジカル / ビス(シリルラジカル) / ジシラキノジメタン / 基底3重項分子 |
Research Abstract |
3配位ケイ素中性種であるシリルラジカル種は活性中間体としての分光学的観測を中心として研究されてきたが、2001年我々は初めての単離可能なシリルラジカル種の合成、構造解析に成功し、その構造とスピン状態に関する研究を行ってきた。本研究では、同一分子内に二つのシリルラジカル部位を組み込んだ分子としてベンゼン環のパラ位またはメタ位にシリルラジカル部位を連結したパラ-及びメタ-フェニレン架橋ビス(シリルラジカル)種の合成を検討し、その構造とスピン状態、反応性を明らかにすることを目的とした。 パラフェニレン架橋ビス(シリルラジカル)は、対応するジブロモ化合物の還元的脱臭素化反応で合成することに成功し、固体状態ではケイ素ラジカル部位とベンゼン環部位のπ共役による閉殻パラキノジメタン型構造を持ち、基底1重項状態であることを見出した。また、アルコールと容易に反応し、一方のシリルラジカル中心にアルコキシ基が、もう一方のシリルラジカル中心に水素原子が結合した付加体を与え、閉殻パラキノジメタン型構造に対応した反応性を示した。一方で、1,4-シクロヘキサジエンなどの水素供与体とも容易に反応して二つのシリルラジカル部位に水素原子が結合したジヒドロ体与えたことからビラジカル性を併せ持つことが分かった。 また、メタフェニレン架橋ビス(シリルラジカル)は、対応するジヨード化合物の還元的脱ヨウ素化反応で合成することに成功し、固体状態ではケイ素ラジカル部位とベンゼン環部位のπ共役が不可能な配座を持ち、フェニレン環に結合交替が存在しないことから、二つのシリルラジカル部位がメタフェニレン基で単純に連結された分子であることが分かった。低温マトリックス中でのEPRスペクトルにおいて三重項種特有のシグナルが観測され、その強度の温度依存性からメタフェニレン架橋ビス(シリルラジカル)は、基底3重項分子であることを明らかにした。
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