2010 Fiscal Year Annual Research Report
高周期典型元素をスピン中心とする常磁性化学種に関する研究
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21350023
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
一戸 雅聡 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 准教授 (90271858)
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Keywords | 常磁性化学種 / 開殻分子 / 高周期典型元素 / シリルラジカル / トリス(シリルラジカル) / 高スピン分子 |
Research Abstract |
3配位ケイ素中性種であるシリルラジカル種は活性中間体としての分光学的観測を中心として研究されてきたが、2001年我々は初めての単離可能なシリルラジカル種の合成、構造解析に成功し、その構造とスピン状態に関する研究を行ってきた。昨年度までに、二つのシリルラジカル部位をベンゼン環のパラ位またはメタ位を連結したパラ-及びメタ-フェニレン架橋ビス(シリルラジカル)種の合成を検討し、特にメタ-フェニレン架橋ビス(シリルラジカル)が室温で単離可能な基底3重項種であることを明らかにした。 本年度は、ベンゼン環の1,3,5位で三つのシリルラジカル部位を集積させた化学種の合成、構造、スピン状態について検討した。ヨードシリル基をベンゼン環の1,3,5位に導入した前駆体をTHF中、カリウム-グラファイト(KC_8)で還元的に脱ヨウ素化することで、目的とするトリス(シリルラジカル)種の合成、単離に成功した。単結晶X線結晶構造解析で決定した分子構造上の特徴から、三つのシリルラジカル部位がベンゼン環で単純に連結された分子であることを明らかにした。また、低温マトリックス中でのEPRスペクトル解析から基底四重項種であることを見出し、シリルラジカル部位を適切に集積することで室温で単離可能な高スピン化学種を構築出来ることを示した重要な研究成果である。 また、シリルラジカル部位とベンゼン環π電子系、ヘテロ元素間の相互作用を詳細に検討するためのモデル化合物としてのアリール置換モノシリルラジカル種や、ヘテロ原子置換基を導入した単離可能なモノシリルラジカル種の合成、単離にも成功し、単結晶X線結晶構造解析によりそれらの分子構造も決定した。
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