2011 Fiscal Year Annual Research Report
高周期典型元素をスピン中心とする常磁性化学種に関する研究
Project/Area Number |
21350023
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
一戸 雅聡 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (90271858)
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Keywords | 常磁性化学種 / 開殻分子 / 高周期典型元素 / シリルラジカル / ビス(シリルラジカル) / 高スピン分子 |
Research Abstract |
昨年度までは、π共役ユニットであるベンゼン環を連結子とするオリゴ(シリルラジカル)種の合成を検討し、ベンゼン環の1,3位、1,3,5位に二つまた三つのシリルラジカル部位を導入した分子がそれぞれ基底3重項、基底4重項分子であることを実験的に明らかにしてきた。本年度は、ベンゼンのようなπ共役連結子に替えて特異なσ共役を発現するケイ素鎖のうち最も基本的なジシラン鎖で連結したビス(シリルラジカル)[R_2Si(・)-SiMe_2SiMe_2-Si(・)R_2(R=SiMe^tBu_2)]を設計し、その合成、構造、スピン状態について検討した。対応するジブロモ化合物をTHF中、カリウム-グラファイト(KC_8)で還元的に脱臭素化することで、目的とするビス(シリルラジカル)種を合成、単離することに成功し、単結晶X線結晶構造解析で分子構造も決定した。これまでに構造決定しているモノシリルラジカル種、高スピンオリゴ(シリルラジカル)種と同様に3配位ケイ素ラジカル中心は、平面3配位構造をとり、スピンを担うケイ素3p軌道と連結子ジシラン部位のケイ素-ケイ素σ軌道が共役可能な配座を持つことが示さた。3重項分子としての理論計算の結果も3p(si)-σ(si-si)-3p(si)相互作用の存在を示唆し、スピンを担う二つの半占有分子軌道(SOMO1、SOMO2)に約0.4eVのエネルギー差を生じるが、基底3重項分子であることが、実験的にも理論的にも明らかにできた。 また、溶液中においてジシラン連結ビス(シリルラジカル)[R_2Si(・)-SiMe_2SiMe_2-Si(・)R_2(R=SiMe^tBu_2)]は中央のケイ素-ケイ素結合の解裂で生じる2分子のケイ素・ケイ素二重結合化合物ジシレン[R_2Si=SiMe_2(R=SiMe^tBu_2)]との平衡混合物として存在していることを実験的に見出し、解離平衡に関する理論的解析も行った。
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