Research Abstract |
無秩序な有機分子が形成する有機結晶を利用したトポケミカル反応は固相光反応が有効な手段であり,我々は基質特異的反応や絶対不斉合成の成功例を報告してきた。ところが,結晶を異相間の分子間反応に応用した場合には,数々の問題があった。そこで,結晶を溶解した後でも分子構造を記憶する分子メモリー機能を用いることにより,結晶相反応では成し得なかった多様な反応系へと有機結晶の利用を拡大してきた。 これまでの研究成果を受けて、超臨界流体中のキラル結晶化,分子キラルメモリーを利用した新規絶対不斉合成の開発、高度立体規則的反応の開発、分子認識等の新たな領域の開発に取り組み発展させるために、以下の研究計画にて推進した。 (1)分子メモリーの外的制御:有機分子のラセミ化の活性化自由エネルギーは外的な条件によりかなり大きく制御することが可能である。ラセミ加速度を制御し,いかにして高い光学純度でのキラル結晶化を行い,結晶を溶解した後のラセミ加速度を制御して化学反応を行い光学活性化合物に導くことができるかを明らかにした。 (2)新規キラル分子メモリーの創製と絶対不斉合成の開発:キラル分子メモリーの手法を用いた不斉酸化反応,不斉還元反応,イリドとの反応,カルベンとの反応,不斉触媒反応系への展開を幅広く展開した。例えば,ニコチンアミド誘導体は,キラル結晶化に成功しており,NADHモデルや有機不斉触媒としても展開を検討するなど,積極的に多くの反応系に挑戦した。 (3)結晶化によるジアステレオマー制御:キラル分子メモリーの手法は絶対不斉合成に限らず,ジアステレオ選択的反応へも応用が可能である。結晶化(CIDT法)により制御された不斉環境を均一系での分子メモリーとして活用した高ジアステレオ選択的反応を開発した。 (4)キラルメモリー材料,不斉分子認識,キラルスイッチングなどへ積極的に展開した。
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