2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規窒素固定法に供する金属-硫黄クラスター分子の開発
Project/Area Number |
21350033
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清野 秀岳 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (50292751)
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Keywords | 窒素固定 / 金属硫黄クラスター / 合成化学 / 触媒・化学プロセス / 無機工業化学 |
Research Abstract |
1.窒素分子が安定に配位する金属-硫黄クラスターとしてこれまでに見いだされているものは唯一[{Ru(N_2)(tmeda)}(Cp^*Ir)_3(μ_3-S)_4](tmeda=Me_2NCH_2CH_2NMe_2;Cp^*=η^5-C_5Me_5)であるため、このクラスターサイトの持つ性質を精査した。この前駆体となる二電子酸化体[{Ru(MeCN)(tmeda)}(Cp^*Ir)_3(μ_3-S)_4]^<2+>は、非配位性溶媒中においてMeCNの速い解離と再配位を起こしている可能性がNMRおよび電気化学測定から示唆された。このクラスターの電気化学的還元では2電子目の導入過程が複数存在するが、より正側の電位に位置するものは窒素雰囲気下でのみ現れ、過剰のMeCNの添加により消失した。このことは、窒素分子の配位が還元型クラスターを安定化していることに対応していると考えられる。Ru上の補助配位子が異なり窒素配位能が弱いアナログは、そのような電気化学的特性を有しない。 2.TaIr_3S_4型骨格を有するシングルまたはダブルキュバン型クラスターを配位子交換によって誘導した。そのNb,Vアナログとともにヒドラジン還元反応の触媒活性を検討したが、顕著な活性は見いだされなかった。 3.金属-硫黄クラスターと無機小分子との相互作用を解明する観点から、擬キュバン型骨格を有する[(Cp^Ru)_2(MCl_2)_2(μ_3-S)_2(μ_3-Cl)_2](M=Sb,Bi;Cp^=η^5-C_5Me_4Et)と酸素分子との反応を行った。このクラスターはPPh_3の酸素酸化を触媒するが、その触媒活性種の一つとしてクラスターの酸素化によって生成する三核クラスター[(Cp^Ru)_2(MCl_2)(μ_3-S)(μ_3-Cl)_3]および[(CP^Ru)_2(SbCl_2)(μ_3-SO)(μ_3-Cl)_3]が見いだされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
窒素分子を配位活性化できるクラスター分子の開発という目的に対し、現段階ではそれを達成した新規化合物を得るに至っていない。また、窒素分子以外の基質変換におけるクラスター分子の利用についても、反応開発が十分ではない。一方、既存の窒素分子を配位したクラスターについて化学的性質が詳細に明らかとなるとともに、窒素固定酵素における窒素分子還元過程の機能モデル化合物が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで開発したクラスターは窒素分子の還元には至らないものの、有機分子との親和性と非常に高い電子供与性を有することから、有機不飽和化合物などの触媒的還元に有効性が期待される。また、窒素分子の変換という目標からは、ある程度反応厳しい条件下でのクラスターの反応性も検討を要する。研究協力者の不足という問題があるため、広範な反応スクリーニングを行うことは難しい。そこで過去3年間で得られた知見を元に、実験手法の効率化で時間を短縮し、目的達成の可能性が最も高いと推測される化合物、反応系の開発に研究を集約する。
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Research Products
(3 results)