2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロ二核有機遷移金属錯体の金属間協同効果に関する研究
Project/Area Number |
21350034
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
小宮 三四郎 Tokyo University of Agriculture and Technology, 大学院・共生科学技術研究院, 教授 (00111667)
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Keywords | 白金-マンガンヘテロ二核錯体 / メチル基移動 / 可視光 |
Research Abstract |
一連のジメチルアリール白金-マンガンヘテロ二核錯体(^tBu_2bpy)Me_2ArP-Mn(CO))_5(Ar=Ph(1),C_6H_4OMe-p(2))をPtMe_2ArI(^tBu_2bpy)とNaMn(CO)_5とのメタセシス反応により合成した。これらの錯体は重ベンゼン中、20℃、暗所下で白金からマンガンへのメチル基移動が進行し、PtMeAr(^tBu_2bpy)およびMnMe(CO)_5を与えた。この反応は白金上でのメチル基とマンガンの還元的脱離反応であり、類似の低酸化状態のメチル白金-マンガン錯体の場合より非常に速く、金属の酸化数が高いことが速い還元的脱離の要因であると考えられる。この反応は、二核錯体の濃度に対して1次であり、その反応速度定数は可視光(>500nm)を照射することにより、暗所下に比べ約10倍増加した。可視光照射下での錯体1のメチル基移動反応では、フリーラジカル禁止剤である2,6-di(tert-butyl)phenolや配位子^tBu_2bpyおよびマンガンアニオン[PPN][Mn(CO)_5]の添加効果はなく、また、顕著な溶媒効果も無かったことから、本反応ではフリーラジカルの生成や、配位子である^tBu_2bpyやマンガンアニオンの解離を伴うことなく進行していると考えられる。本反応では、可視光の照射によりHOMOであるPt-Mn結合の電子が、LUMOである^tBu_2bpyのπ*軌道に遷移することでMn(I)カチオンとbpyラジカルアニオンが生成し、その結果、選択的なメチル基の移動反応が進行したものと推測される。可視光により、化学選択的に遷移金属錯体の還元的脱離反応が進行することは、光による錯体触媒反応制御に関連して重要な知見である。
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