2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロ二核有機遷移金属錯体の金属間協同効果に関する研究
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21350034
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
小宮 三四郎 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 教授 (00111667)
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Keywords | 遷移金属 / 協同効果 / 触媒 / 二核錯体 |
Research Abstract |
本年度は、カルベン配位子を持つルテニウム-マンガン錯体の合成とその反応性について検討した。ルテニウムカルベン錯体RuCl_2(PCy_3)_2(=CHPh)とマンガンカルボニルアニオンNa[Mn(CO)_5]との反応から、新規のカルベン架橋型ルテニウム-マンガン二核錯体を単離した。この錯体では、もともとルテニウム上に配位していたカルベン配位子が、ヘテロ二核錯体になることにより、架橋配位子となっていた。このことは、これまでヘテロ二核有機白金-遷移金属錯体で見られた白金から遷移金属への有機基移動と同様な反応がカルベンでも起きているためと推定した。また、ルテニウム上のホスフィンとマンガン上のカルボニル配位子が交換していることが、X線構造解析の結果明らかとなった。この結果は、それぞれの金属間の立体的反発を避けるためと、熱力学的安定性によるものと思われる。また、この錯体のNMRでは、カルベン配位子のフェニル基のオルト位およびメタ位のプロトンがブロードに観測され、動的挙動が推測された。測定温度を下げていくと、このシグナルは、二つのダブレットおよび二つのトリプレットに変化した。この挙動は、架橋構造をしているカルベン配位子上のフェニル基の自由回転が遅くなり、フェニル基上のオルトおよびメタ位のプロトンの磁気的環境が異なるようになったためと考えられる。 この架橋カルベン錯体の酸分解では定量的にトルエンが生成するが、重塩化水素で酸分解すると、PhCHD_2(40%)のほかにPhCD_3(60%)の生成が確認された。この結果は、段階的な加水分解で可逆的に生成するベンジルルテニウム中間体において、非常に速いα水素脱離反応が可逆的に起きていることを示している。
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