Research Abstract |
本研究では,半導体微細加工や陽極酸化を用いて作製したナノ構造体とバイオナノ薄膜である脂質二分子膜とを結合させることにより,二分子膜系の最大の問題であったその機械的脆弱性の問題を解決し,チャネルタンパク質に基づくバイオチップやセンサーアレイの構築を目指している.今年度は,窒化ケイ素薄膜を積層したシリコン基板を加工して微細孔を作製し,その孔中で二分子膜形成を行い,構築した膜系の機械的強度について評価を行った.その結果,構築した膜系は,耐電圧±1.V以上,最長寿命43時間であり,チャネルを包埋した状態でも数回にわたる溶液交換に耐える膜安定性を示した.よって,従来の二分子膜に比べて著しく強度の高い二分子膜の形成に成功した(Langmuir 2010, 26, 1949-1952.).しかし,この膜系には,シリコン由来の大きな電気容量のためノイズ電流が大きいという問題があることも分かってきた.そこで,絶縁層の被覆により電気容量を下げた結果,従来の膜系と同等のレベルまでノイズを減らすことに成功した.また,ナノポーラス構造をもつポーラスアルミナ薄膜上での脂質二分子膜形成についても検討し,従来の二分子膜に比べて高い機械的強度と,チャネル電流計測に適した電気特性を兼ね備えた二分子膜の形成に成功した.この他,二分子膜形成時における再現性の向上を目指し,表面赤外分光法を用いた脂質二分子膜形成過程のその場観察を行い,チャネル電流測定には必須のGΩレベルの高い抵抗を持った二分子膜が形成される際には,リン脂質分子のC=O伸縮モードが現れることを見出した(Appl.Phys.Lett.2009, 94, 243096-1-3.)
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