Research Abstract |
本研究では,半導体微細加工や陽極酸化を用いて作製したナノ構造体とバイオナノ薄膜である脂質二分子膜とを結合させることにより,二分子膜系の最大の問題であったその機械的脆弱性の問題を解決し,チャネルタンパク質に基づくバイオチップやセンサーアレイの構築を目指している.今年度は,ナノポーラス構造をもつポーラスアルミナ薄膜を支持体として用いて,脂質二分子膜の安定化を行うアプローチについて検討した.ナノポーラス構造を用いることにより,個々の膜面積をナノスケールに下げることによる膜安定性の向上と,同時に,大きな総膜面積を保つことによるチャネル包埋確率の向上の2つを兼ね備えた膜系の構築を目指した.その結果,構築した膜系は,耐電圧±1V以上,最長寿命30時間であり,従来の二分子膜に比べて著しく強度の高い二分子膜の形成に成功した(Applied Physics Letters 2010,96,213706.).この他,前年度に報告したシリコン微細加工に基づく安定化脂質二分子膜の電気特性の向上についても検討を行った.この膜系は非常に安定で,ポーラスアルミナを支持体として用いた膜系でも不可能な溶液交換にも耐える非常に高い機械的強度を持つが,シリコン由来の大きな電気容量のためノイズ電流と過渡電流が大きく,高速開閉する生体チャネルのチャネル電流を記録するためには電気特性の改善が必要であった.本年度は,このシリコンチップの電気容量を下げるため,熱酸化膜(SiO_2層)およびテフロン層による絶縁層被覆を行い,このチップ内に形成した二分子膜の電気特性を評価した.その結果,ノイズ電流幅を1-2pA,過渡電流を0.5ms以下にまで下げることに成功した(投稿中).
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