Research Abstract |
モリブデン,タングステン同位体比分析法の開発 (1)海水中モリブデンおよびタングステン同位体比の精密分析法を開発した.これらは新しい固相抽出法と質量差別効果補正法に基づいており,従来法より簡便,迅速,高精度である.同法は,陸水や堆積物溶解試料にも適用可能であり,今後広範な応用が期待される.(2)太平洋,南極海,大西洋から得られた170以上の海水試料を分析し,モリブデン同位体比が世界海洋で均一であることを示した.このデータは,モリブデン同位体の地球上での循環を考察する上で必須のものである.(3)日本の雨水,湖水,河川水におけるモリブデン同位体比の変動を初めて測定した.また,スイスの湖の酸化還元境界におけるモリブデン同位体比の変動を明らかにした.(4)日本沿岸海水を用いて,海水中タングステン同位体比を世界で初めて明らかにした.海水は岩石や堆積物に比べて重いタングステン同位体に富むことが分かった. MC-ICP-MSの高感度化 本研究を通じて,海水中タングステンを定量的に回収し,正確な同位体組成分析を行うことは可能となった.しかし,従来の分析法では分析に必要な海水量が多く,研究展開上想定される特殊環境試料(例えば深層水試料)では,分析法のさらなるダウンサイジングが不可欠である.このため本年度は,プラズマ質量分析計の真空強化を図り,分析感度の向上を図った.真空ポンプと質量分析計間で,グロー放電が起こるため装置の安定性が低下するという問題が発生したが,連結した抵抗を用いて空間電位を徐々に変化させることで放電の影響を除去し,安定した信号を得ることができた.現時点では,従来の50%程度の高感度化にとどまっているが,分析条件の最適化により,2倍程度の高感度化を目指す. インド洋における海洋観測 平成21年11月から22年2月に行われた白鳳丸KH-09-5航海に参加し,海水試料を採取した.
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