2011 Fiscal Year Annual Research Report
プロトン性配位子/金属アルコキシド系触媒を用いるアルコール化学変換の新展開
Project/Area Number |
21350052
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
斎藤 進 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (90273268)
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Keywords | 分子触媒反応 / アルコール変換 / プロトン性配位子 / 金属アルコキシド / 環境負荷低減 / 炭素-炭素結合形成反応 / 炭素-酸素結合形成反応 / 炭素-窒素結合形成反応 |
Research Abstract |
アルコール類を実質的にも形式的にも「求電子剤(R^+-^-OH)」として用いるための、新触媒反応設計戦略の妥当性を数々の新規反応で証明した。この研究を通じて「分子表面触媒」の有用性が一部花開いた。ある時には様々なアルコール基質の2つの水素(R_2CHOH)が、触媒表面に触れ、水素移動が促進される。ここでいう「水素移動」は「水素化」の逆反応であるため、同じ遷移状態を原理的に経るはずの水素化においても分子表面触媒が十分機能しうることが示唆された。また別の時にはヒドロキシル基の酸素が触媒表面上のH^+で活性化され脱水が起こる。触媒構造に「共役」を組み込むことによってほぼ中性pHの反応条件を達成でき、それでも協奏的な触媒作用が十分に発現することを証明した。全体として「RO(δ-)-M(δ+-)-X(δ-)-H(δ+)型の「分子性の触媒表面」の触媒化学における重要性を実証した6より具体的には、(1)アルコールから、求核剤ならびに求電子剤という一見相反する機能(umpolung)を同一反応容器内で同時に引き出すことに成功し、多彩な炭酸Iステル(ポリカーボネートの原料)をCO_2から定量的に製造できた。特筆すべきは、穏やかな反応条件(100℃以下、CO_2圧1atm)である。(2)フォスファゼン系分子触媒を用いる脱水的N-アルキル化(アルコールとアミンの反応)に成功した。アルコールは「R^+-^-OH」として働き、HO-C基の炭素に対してS_N2型で反応することが強く支持された。N-モノアルキル化とN,N-ジアルキル化の作り分けも可能となった。(3)Cu(OR)/NaOH/H_2触媒を用いる2種の異なる交差アルコールカップリング反応(C-C結合形成反応)を実現した。驚くべきことに、Cu(OR)種は、触媒サイクルをまわす前段階(触媒活性種の誘導段階)に作用しており、その後は基質誘導型触媒サイクルで反応が進行することを突き止めた。すなわち本反応に実は遷移金属源は実質的に必要なく、アルカリ金属アルコキシドクラスターが触媒として働き、見かけ上の酸化も還元も、すべて基質が担うMPVO型の反応であることを証明した。実際に、触媒量(1mol%以下)のカルボニル化合物が共存すれば、Cu源もH_2も必要なく、NaOHだけで触媒サイクルが廻る。
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