2011 Fiscal Year Annual Research Report
非ホスフィン系N4配位子を用いるケトン類の触媒的不斉水素化
Project/Area Number |
21350053
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北村 雅人 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 教授 (50169885)
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Keywords | 窒素系配位子 / Ph-BINAN-H-Py / ルテニウム / 不斉水素化 / 反応機構 |
Research Abstract |
ケトン類の水素化は最も基本的かつ重要な反応の一つであり、高い官能基・立体選択性を有する高性能触媒の開発研究への注目度は高い。平成23年度の交付申請書に記載のように、ドナーアクセプター型二官能性機能によるカルボニル基の活性化を基軸に、配位子に立体的・電子的特性をもつ配位原子を組み入れることによって、問題解決を目指した。具体的には、sp2N/sp3NH混合系四座配位子Ph-BINAN-H-Py/Ru触媒系を用いる芳香族ケトン類の不斉水素化の機構解明をおこない、1)触媒前平衡が存在する、2)本反応系では時間の経過とともに速度が指数関数的に増加する、3)触媒への基質の配位による阻害がある、といった特徴を明らかにした。これまでに報告されているケトン類の水素化の機構解明研究結果とは全く異なる型式である。また、基質構造や配位子構造と反応性・選択性の相関を調査し、エナンチオ面選択の起源が配位子ピリジンC(6)Hと基質ベンゼン環および配位子ピリジルメチル部の芳香環と基質C-H間の2つのCH-p相互作用によることが分かった。さらに、鎖状PNN型三座配位子BINAN-Py-PPh2を用いる触媒系の開発をおこなった。fac型錯体の定量的合成法を確立するとともに、芳香族ケトン類だけでなく単純ケトン類や官能基化されたケトン類の不斉水素化を試みたところ、立体要請度の高い官能性/非官能性ケトン基質に対して高い反応性、選択性を示した。従来法に比較して基質汎用性が高く、様々なケトン基質に応用できた。錯形成時における高fac選択性が、高機能発現に重要であると考えている。触媒設計に新たな指針を示すものとして注目される。Ph-BINAN-H-Py-Ru触媒系は「窒素系配位子で高活性・高選択性を達成したはじめての例」である。
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