2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21350064
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
四方 俊幸 Osaka University, 理学研究科, 准教授 (10178858)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 正志 大阪大学, 理学研究科, 教授 (80201937)
浦川 理 大阪大学, 理学研究科, 助教 (70273539)
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Keywords | 環境関連高分子 / 水和 / 溶媒和 / 緩和時 / 誘電緩和 |
Research Abstract |
これまでの高分子溶液研究においては、溶媒を連続媒体と見なしその中に溶解した高分子がブラウン運動しているという描像を基本に、平均的な高分子の形態と自己拡散が主に議論されてきた。しかし、モノマーオーダーの分子運動性や溶媒との相互作用の強さについての一般的な理解は、充分な状況にあるとは言えない。本研究では、「高分子が溶媒に溶けている」ということは一体どのような状態なのかを完全に理解することを究極の目的とする。この目的を達成するために、まず測定に用いる装置の導入と、測定システムの構築を目指した。 8月にネットワークアナライザが納入されたので、液体試料の超高周波誘電緩和測定法として有効なプローブ法を用いた測定システムを構築し、その動作を確認した。測定システムの構築と並行して、コラーゲンモデル物質の水和についての研究を開始した。コラーゲンモデル物質の(Prolyl-ProlylGlycyl)_n(PPGn)は、n≧9で天然コラーゲンと同じ7/2-周期の三重らせんを形成し、水溶液は30℃付近で三重螺旋-単一鎖(TH-SC)転移を示す。PPG10のTH-SC転移はこれまで旋光分散や円偏光二色性を利用して議論されてきたが、単一鎖状態のモル分率f_<coil>を求めるための基準が曖昧であったため、温度に対するf_<coil>の変化は正確には議論されていなかった。本研究では、PPG10水溶液あるいは20mM酢酸溶液の超高周波数域での誘電緩和挙動を詳細に調べ、PPG10が溶液中で形成する三重らせんと単一鎖状態のダイナミックスの議論から、f_<coil>を温度の関数として正確に求める方法を確立した。また、TH-SC転移を化学反応としてとらえることによって、誘電緩和挙動から得られたf_<coil>の温度依存性を用いてTH-SC転移を熱力学的に解析することを実現した。従って、本年度の目的は概ね達成できたと言える。
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