2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21350064
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
四方 俊幸 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (10178858)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 正志 大阪大学, 理学研究科, 教授 (80201937)
浦川 理 大阪大学, 理学研究科, 講師 (70273539)
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Keywords | 環境関連高分子 / 水和 / 溶媒和 / 緩和時間 / 誘電緩和 |
Research Abstract |
これまでの高分子溶液研究においては、溶媒を連続媒体と見なしその中に溶解した高分子がブラウン運動しているという描像を基本に、平均的な高分子の形態と自己拡散が主に議論されてきた。しかし、モノマーオーダーの分子運動性や溶媒との相互作用の強さについての一般的な理解は、充分な状況にあるとは言えない。本研究では、「高分子が溶媒に溶けている」ということは一体どのような状態なのかを完全に理解することを目的とした。本研究の初年度に完成した広帯域誘電スペクトル測定システムを用いて溶媒そのものの測定や高分子溶液の測定に着手し、測定データの蓄積と解析に努めた。また、本年度が研究の最終年であることを考慮して、研究結果の取りまとめ作業も行った。 本年度の具体的な研究成果としては、高分子を良く溶かす極性溶媒の代表的存在である、dimethylsulfoxide(DMSO)が、強い双極子-双極子相互作用によって反平行なコンフォメーションでの二分子間会合を生じることを誘電スペクトル測定から明らかにしたことである。また、コラーゲンモデル物質である(L-Prolyl-L-ProlylGlycyl)_n(PPn)や天然由来の幾つかのタンパク質、あるいは単量体に相当するアミノ酸の水溶液における水和・脱水和についての研究を誘電スペクトル測定法を用いて行った。その結果、以下のことも明らかになった。PPG5やPPG7は分子量が低いため温度に依らず単一鎖の形態で存在するが、概ね30℃付近で脱水和を生じ、アミノ酸残基当たりの水和数は低温側では9、一方、高温側では3と評価された。この様な脱水和挙動は、天然の低分子化コラーゲンやリゾチーム、さらに多くのアミノ酸でも共通に確認された。従って、これらの30℃付近での脱水和挙動は、単量体であるアミノ酸が有する基本的な特性が高分子化して保持されたものと結論付けられる。 以上の様に、タンパク質の水和・脱水和についての重要な知見が得られたことから、本年度の目的は概ね達成できたと言える。
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Research Products
(11 results)