2009 Fiscal Year Annual Research Report
連続ナノ細孔中での分子拡散工学と界面分子工学を融合した新光電変換素子の提案
Project/Area Number |
21350079
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
早瀬 修二 Kyushu Institute of Technology, 生命体工学研究科, 教授 (80336099)
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Keywords | 色素増感度太陽電池 / レドックス / 拡散 / 解放電圧 / 色素 / ナノポア / 高効率 / ヨウ素 |
Research Abstract |
本研究の目的はナノ酸化物半導体/リキッドジャンクション、ナノ酸化物半導体/有機固体ジャンクションからなる光電変換素子の高性能化のための指針を提案することであり、特にナノ酸化物半導体中に形成される連続ナノ空間での分子拡散に焦点を絞り、高効率化のための光電変換ナノ界面を分子工学的に構築することである。本年度は、ナノポーラスチタニア内の分子拡散をできるだけ素子構成で測定することを目的に、計測システムを構築した。実際にレドックス種のナノポア内での拡散実験を行い、光電変換素子の性能向上に関係する因子を見出した。本計測装置は、自立するナノポアシートをレドックス種濃度測定装置でサンドイッチした構造を有する。ナノポアシートはメッシュ構造を有する支持母体にチタニアナノ粒子を塗布することにより作製した。レドックス種濃度は分光的に連続的に測定し、D.D.Frey,C.J.Kings,J.Chem.Eng.Data.,27,419(1982)らの式を用いて見かけの拡散係数を測定した。レドックス種として、I-,I3-,I2の三種を、ナノポーラスチタニア表面を種々の色素を吸着させたナノポア内を拡散させ、その拡散速度係数を相対的に比較した。I-,I3-の拡散速度はI2の拡散速度よりも遅く、前者は色素とのイオン的、静電的相互作用が強く、拡散が阻害されていることがわかった。特にI3-の拡散速度はその他のレドックス種と異なり、静電相互作用が大きな色素で修飾したナノポア内では拡散が大きく阻害されることがわかった。ナノポア内でのI3-の拡散が遅くなるほど、光電変換セルの解放電圧(Voc)が低下するという新事実を見だした。ナノポア内でI3-の拡散が大きく阻害されるということは、I3-が色素と相互作用し、I3-が色素近傍に存在する確率が高いことを意味しており、このため色素/チタニアからI3-への逆電子移動(電荷再結合)が起こりやすく、Vbcが低下すると説明できた。光電変換効率が高い色素構造をナノポア内でのI3-の拡散係数から推定できることを新しく見出した。この結果は高効率色素の研究開発に大きな指針を与えることができる。
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