2011 Fiscal Year Annual Research Report
連続ナノ細孔中での分子拡散工学と界面分子工学を融合した新光電変換素子の提案
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21350079
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
早瀬 修二 九州工業大学, 大学院・生命体工学研究科, 教授 (80336099)
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Keywords | 色素増感太陽電池 / 拡散 / ナノ / 光電変換界面 / 酸化物半導体 |
Research Abstract |
色素増感太陽電池に代表されるナノ酸化物半導体を使った光電変換素子は従来の半導体プロセスを使わない低コスト型太陽電池として注目を集めている。色素増感太陽電池の性能をさらに向上させるためには電荷再結合を防止する必要がある。本研究の目的はナノ酸化物半導体/リキッドジャンクションからなる光電変換素子の高性能化のための指針を提案することであり、特にナノ酸化物半導体中に形成される連続ナノ空間での分子拡散に焦点を絞り、高効率化のための光電変換ナノ界面を分子工学的に構築することである。色素としてルテニウム錯体、スクアリル色素、インドリン系色素が良く用いられている。これらの代表的な色素で修飾したナノボア内のヨウ素レドックスの拡散を独自に開発した装置で測定し、そのポア内拡散定数と開放電圧(Voc)の関係を明らかにした。色素に置換する側鎖が同じような大きさ、分子サイズが同じような大きさの色素でポア内を修飾する場合、ヨウ素レドックスの拡散速度とVocには明らかに相関性があり、I3-の拡散がナノポア内で遅くなるほど太陽電池のVocが低下した。I3-と強く相互作用すると考えられる色素でナノ界面を修飾するほど、逆電子移動が起こりやすく解放電圧(Voc)が低下したと理解できた。これらの結果を色素構造の観点から考えると色素の置換基が大きいほど、チタニア内電子とI3-の接触を抑制することができVocが高い傾向にあった。同じ程度の嵩高さを有する置換基で比べると、FやO原子のように電荷の偏りを誘発し、I3-と相互作用しやすい置換基を側鎖に有する色素を使った色素増感太陽電池はVocが低い傾向にあると考えられた。これらの結果から、疎水性の長いアルキル基を有する色素が高効率を達成するための一つの候補であることが提案できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
色素増感太陽電池に一般的に使われている代表的な色素母体構造であるRu色素、スクアリル色素、インドリン色素を用い、20種類の色素を用いてナノポア中でのヨウ素の拡散定数を測定した。色素のサイズが同じくらいの色素間で比較すると、明らかに拡散速度が遅いほどVocは低下しており、ナノポア中のヨウ素の拡散が電荷再結合のしやすさを決定する一因であることを実証できた。ヨウ素の拡散が遅くなる原因として、色素置換基中のF,O原子がヨウ素と相互作用するためであることが推定でき、長い疎水性置換基を有する色素が高効率を与えるという指針を見出すことができた。高効率を与える色素構造を実験事実から提案できたことにより、当初目的を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
最近、Co錯体レドックスがポルフィリン色素との組み合わせで高効率を達成したという報告がなされ注目を集めている。本研究室においても、各種色素とCo電解液を使った太陽電池の特性を調べた結果、色素構造によって大きく太陽電池特性が変化することがわかった。この原因を、各種色素で修飾したナノポアでのCo錯体の拡散速度とVocの関係から説明する。拡散速度とともにポーラスチタニア内での電子寿命および電子拡散速度も測定し、色素の構造とコバルト電解液との組み合わせで起こる効率の変化を多方面から解析する。
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