2011 Fiscal Year Annual Research Report
有機半導体単一結晶ドメイン素子の作製とテラヘルツ波イメージングへの応用
Project/Area Number |
21350099
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
中村 雅一 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 特任教授 (80332568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松末 俊夫 千葉大学, 大学院・融合科学研究科, 講師 (20209547)
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Keywords | テラヘルツ/赤外材料・素子 / 結晶工学 / 先端機能デバイス / 有機半導体 / 半導体物性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、大きなキャリア輸送障壁のないOFETの作製法を確立し、大面積フレキシブルTHzイメージングデバイスを創出するための基礎的な知見を得ることである。そのために、(1)グラフォエピタキシー効果を利用し、微小なバンド端ゆらぎを残したまま大きなキャリア輸送障壁が無いOFETを作製する方法の研究、ならびに、(2)有機電界効果トランジスタ(OFET)におけるゲート電場誘起キャリアによるTHz帯分光学的研究の2サブテーマを平行して行っている。 (1)のサブテーマについて、アモルファス基板表面に適切な周期的な溝構造を形成することによって、溝端部における表面の折れ曲がり線に対してペンタセン結晶粒のb軸が垂直になるように配向成長することを実証し、成長条件の最適化によって大きなキャリア輸送障壁を有する結晶粒界の数を1/2に減らすことに成功した。この障壁低減効果には、面内配向による効果に加えて、溝端部での核生成頻度が高いことによって、結晶粒が一直線に並ぶことの効果が加わっていることを考察した。 (2)のサブテーマについて、OFET中の電場誘起キャリアによって、容易に検出できるレベルのTHz波吸収が生じることを示した。その吸収スペクトルは、単純なDrudeモデルでは説明できず、キャリアが置かれた環境のポテンシャルゆらぎの影響を受けていることが示唆された。今後、様々なOTFTの作製技術を統合して研究を進めてゆくことによって、THz吸収スペクトルからキャリアの状態を知るための基礎的な知見を蓄積してゆけるものと期待される。さらに、この結果は、OFET中のキャリアがTHzフォトンのエネルギーを吸収していることを示すものでもあることから、THzセンサへの応用にも希望が持てる結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つの研究サブパートのいずれについても、国際会議発表あるいは論文投稿に至るだけの結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今回実証したグラフォエピタキシーの効果をさらに高める工夫について、様々な試みを行ってゆく予定である。 さらに、今後基礎的な実験と平行して、THz波照射によるソースードレイン間ドリフト電流の変化を測定することで、THzフォトンより受け取ったエネルギーによってペンタセンFETに電界誘起されたキャリアのドリフトが促進されることを確認する実験も行う。また、実験の進展に応じて、THz波イメージングのための検証実験も行う。
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