2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21350109
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荒木 孝二 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (40134639)
|
Keywords | 励起状態 / 有機固体発光材料 / 蛍光 / ESIPT / 結晶構造解析 / 置換基効果 / 分子軌道計算 / イミダゾピリジン |
Research Abstract |
研究期間の最終年度にあたり、前年度までの成果を基に得られた知見を整理検討し、研究目的の達成を目指した。 1.高効率固体ESIPT発光を示す化合物の発光機構解析 前年度に引き続き、計算化学により2-(2-ヒドロキシフェニル)イミダゾピリジン(HPIP)誘導体の単分子および分子集積体の励起状態解析をおこなった。その結果、固体で強い発光を示す要因は、単結合周りの回転にともなうESIPT後の励起状態と基底状態との交差点(コニカル・インターセクション)を経由する失活が抑制されることに基づくことが明らかとなった。また単分子での計算より、発光に関わるESIPTおよびIPTのエネルギー準位が、置換基のドナー/アクセプター性パラメータであるHammettσに対して良い直線性を示したことから、ESIPT発光特性は置換基の電子特性から説明できることを明らかにした。 さらに、結晶多形に依存して二色または三色のESIPT発光を示すフェニルイミダゾピリジン(PIP)誘導体を対象として、単結晶X線結晶構造解析により得た結果を計算に適用し、分子のコンポメーションと場の効果に対する集積構造の効果を明らかにした。 2.新規の有機固体発光材料の創出に向けた制御機構の検討 HPIP誘導体の固体ESIPT発光特性が、加熱のみならず圧力や溶媒蒸気という外部刺激によっても制御可能なことを見出し、粉末X線回折測定などからこの発光変化が集積構造の変化に由来すること確認した。さらに一部の誘導体については、これらを組み合わせた可逆的発光スイッチングを実証し、分子集積構造に基づく励起状態制御が可能な新しい有機固体発光材料の創出に向けた重要な成果を得た。またこれらの過程で、白色発光を示す透明フィルムの開発にも成功した。
|