Research Abstract |
平成22年度の研究目的の一つは,ソルボサーマル反応による球状硫化物の生成機構を明らかにすることである。そこで,原料や溶媒の種類,モリブデン:イオウ比,温度,時間などの合成条件を変化させて合成実験を行ない,結晶構造,組成,形態などに関し,得られた生成物を総合的に評価した。その結果,150℃程度の低温から球状粒子の生成が確認された。生成した球状硫化物の硫化物部分を酸で溶解させることにより炭素の球が残ることから,球の形態は炭素からなり,その炭素は有機溶媒から生成することが判明した。溶媒を変えることにより生成物の形態が変化することなどは,溶媒が化学的な反応により炭素質に変化する過程の違いによるものと考えられる。また,モリブデン以外のルテニウムやロジウムにおいても類似した球状の硫化物粒子が合成できることを確認した。硫化モリブデンとの大きな違いは,球状硫化モリブデンでは合成温度を高くしても,仮焼温度を高くしても硫化モリブデン自体は低結晶性のままであったが,球状硫化ルテニウムやロジウムの場合,合成温度を高くすることにより結晶性が向上することがわかった。 もう一つ研究目的は,酸化還元触媒能の向上である。まず硫化ルテニウム系において合成条件を変化させながら合成した試料の酸化還元触媒能を測定し,好適な合成条件を決定した。その結果から,比較的低温で合成し低温で仮焼した低結晶性試料が優れた触媒能を有することを見出した。モリブデンを添加することにより触媒能の向上を期待したが,現在のところ,モリブデンの添加により顕著な改善は得られていない。一方,硫化物に替えて同じ方法を利用してセレン化物の合成を試み,その試料の触媒能を測定したところ,硫化物よりも優れた触媒特性を有することを見出した。現在,より触媒能の高いセレン化物試料の合成条件を探るために研究を継続中である。
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