2010 Fiscal Year Annual Research Report
光検出NMR法の開発とパイ共役系高分子デバイスへの応用
Project/Area Number |
21350125
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
浅川 直紀 群馬大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (80270924)
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Keywords | 光検出磁気共鳴 / π共役系高分子 / ポリアルキルチオフェン / 構造相転移 / 高分子デバイス / 確率共鳴 / ノイズ駆動型情報処理 |
Research Abstract |
本研究では光検出NMR法を開発することにより電子励起状態でのNMR観測を行い、パイ共役系高分子薄膜の励起ダイナミクスを調べる装置開発と方法論の開発を目的として研究を行っている。平成22年度は、静磁場と振動磁場を印加可能な温度可変分光用測定治具を用いてのパイ共役系高分子薄膜の光検出磁気共鳴の検出を主目標として研究を行った。まず、光検出磁気共鳴信号は、振動磁場を印加することにより、極めて微弱な発光強度変化を測定することになるため、レーザーパワーコントローラを用いてレーザー強度の安定化を試みた。また、大気中での酸素ドープにより電子状態の変化を抑えるためにターボ分子ポンプ真空排気システムによる高真空下での磁気共鳴実験を試みた。具体的には以下のような研究を行った。 i)ポリ(3-アルキルチオフェン)[P3AT]のスピンコート薄膜に対して、振動磁場を印加させながら蛍光分光測定を行うことにより光検出磁気共鳴実験を試みた。ゼロ磁場条件下での実験のみならず、数ミリテスラ程度の微弱な静磁場条件下でも実験を行い、マイクロ波印加時の蛍光強度変化からP3ATの素励起状態に関する情報の取得を試みた結果、構造様式ランダム型ポリ(3-ヘキシルチオフェン)薄膜に対して、三重項励起子に由来すると思われる蛍光強度変化を観測することができた。 ii)P3ATは、アルキル側基の長さをチューニングすることにより、室温付近で大きな構造ゆらぎをもつと予想される。そのような構造的にゆらいだ状態での電気伝導特性や誘電特性の時間変動、すなわちノイズ特性を測定した。その結果、構造ゆらぎに起因すると考えられる複素インピーダンスのランダムな変化が観測された。 以上の知見は、π共役系高分子の動的性質を積極的に利用する確率的閾値素子を創製するための基礎となると考えられる。
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Research Products
(9 results)