2012 Fiscal Year Annual Research Report
有機FETの短チャネル化による超高速応答有機FETの開発
Project/Area Number |
21360011
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
赤井 恵 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50437373)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 有機FET / 短チャネル / 微細化 / 周波数特性 / 有機単結晶 |
Research Abstract |
有機素子には無機にはないフレキシビリティさや溶液法等を用いた低コスト製造が可能なことから、学術的だけではなく科学技術的、産業的にも大きな注目を集めている。近年のペンタセンFETやルブレン単結晶FETではキャリア移動度がアモルファスシリコンを凌ぐものも試作され始めており、用途によっては実用可能な段階まで達している。しかしスイッチング素子としての有機電界効果トランジスタ(FET)は従来の無機結晶の素子性能には及んでいないのが現状である。 今は無機半導体の苦手な分野への応用が期待されている有機デバイスも、将来的には高集積化が進み、無機半導体との融合も期待されるだろう。シリコンが辿った微細化を有機が同様に辿れるのであろうか。答えは否である。分子エレクトロニクスと有機エレクトロニクスをつなぐ中間領域の研究は、今後ますます必要とされていくだろう。有機デバイスのサイズを小さくしていくと、大きなときには見えてこなかったさまざまな有機分子、有機結晶、有機/金属界面の基礎物性が見えてきた。有機ナノエレクトロニクスは、要素である分子と、集合である分子個体、それらの境界の物性物理を顕にする研究領域であるとも言えるだろう。 本研究の目的は、有機FETをサブマイクロメートル領域まで短チャネル化することにより、有機FETとしては未踏のMHz―GHz領域の高スイッチング周波数特性をもつ超高速応答有機デバイスを作成することにある。 当年度までにルブレン単結晶短チャネルFETの更なる移動度の向上と高い遮断周波数を目指し、新たな構造を持つ素子の作製に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
通常の有機FET素子構造ではシリコン基板をバックゲートとして用いる為に大きな寄生容量が発生し、せっかく短チャネルで大きな移動度が実現しても高い遮断周波数を計測することが出来ない。 我々は前々年度までに絶縁体基板上に金属ゲートを作製し、薄い酸化膜を成膜し、その上にソースドレイン電極を形成して電極面とゲート絶縁体面に段差のないゲート分離型のボトムコンタクト素子を作製することに成功した。しかしながら、大気成分によるキャリアトラップサイトが多数存在していると考えられ移動度は0.04 cm2/Vsと小さいものとなった。周波数特性を評価したところ、約6 MHzと計測され目標としている100 MHzには達しなかった。しかし、素子の容量は非常に低く抑えられており、素子構造より算出された値は実験結果ともよく一致していた。 前年度は素子の移動度を低下させる要因として、金属と半導体の接触抵抗に注目し、接触抵抗を低減させる要因としての高電界効果を評価した。チャネル長を変化させながら詳細に観察したところ、ゲート電圧の増加による顕著な接触抵抗の低下を観察した。これは有機デバイスにおける動作原理に対する知見として非常に新しいものである。 また素子作製時の雰囲気制御効果について検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度であり、最終的に到達する高速スイッチング周波数の測定に集中する。最終的に取り組む素子構造としては昨年度までと同じ独立ゲート型を予定している。この構造は非常に作成に手間と作成者の技術力が必要とされてしまい、目的を達するのは非常に難しいかもしれないが、残念ながらこれに変わる新たな素子構造が現れない。また昨年発見した高ゲート電圧下の接触抵抗低下効果を利用したスイッチング速度増加に取り組む。 またこれまで独自に高周波数対応様に寄生容量を低減させたプローバーを用いて、独立ゲートルブレン短チャネルFET素子の周波数特性を計測出来する。
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Research Products
(3 results)