2010 Fiscal Year Annual Research Report
ナノサイズ超伝導体中の量子渦糸と近接効果の実空間観察
Project/Area Number |
21360018
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 幸雄 東京大学, 物性研究所, 准教授 (80252493)
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / 走査トンネル分光 / メゾスコピック超伝導 / ナノサイズ超伝導 / 薄膜超伝導 / 渦糸 / 量子化磁束 |
Research Abstract |
本研究では、ヘリウム3冷却超高真空走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて、ナノサイズ超伝導体に磁場印加によって生成される渦糸構造の実空間観察を通じて、通常の超伝導体中での三角格子状の渦糸格子とは異なるナノサイズ超伝導体固有の渦糸構造の観察を試みた。 さまざまな形状を持つPbナノサイズ超伝導体を作成し、磁場印加によりその中に生成される渦糸分布を実空間観察した。低磁場で渦糸の数が少ない状況では、渦糸間の反発力を反映して通常の三角格子状の配列をとるのに対し、磁場の増加とともに渦糸の数が増えると、アイランドの縁近傍では、渦糸が排斥され中央部に押し込まれ、三角格子状の配列構造から乱される様子が観察された。これは、磁場印加時に周辺部を流れるマイスナー電流により渦糸が周辺部から斥力を受けることが原因であるとして説明された。 このことは渦糸構造がアイランド構造の形状にも大きく依存することを示唆している。 また、アイランド構造周辺部では、中心部の超伝導が破壊されるほどの磁場においても、超伝導特性が残る現象が観察された。これは表面超伝導によるものと予測され、実際に、周辺部の超伝導まで破壊される磁場を測定したところ、中央部の約1.6倍と表面超伝導の理論から予測される値とほぼ等しいことから、表面超伝導であることが検証できた。 また、内部に膜厚の薄い部分を有するアイランド構造では、膜厚の薄い領域に渦糸がピニングされる様子を直接観察することに成功している。
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Research Products
(9 results)