2011 Fiscal Year Annual Research Report
ナノサイズ超伝導体中の量子渦糸と近接効果の実空間観察
Project/Area Number |
21360018
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 幸雄 東京大学, 物性研究所, 准教授 (80252493)
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / 走査トンネル分光 / メゾスコピック超伝導 / ナノサイズ超伝導 / 薄膜超伝導 / 渦糸 / 量子化磁束 |
Research Abstract |
本研究では、ヘリウム3冷却超高真空走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて、ナノサイズ超伝導体に磁場印加によって生成される渦糸構造の実空間観察を通じて、通常の超伝導体中での三角格子状の渦糸格子とは異なるナノサイズ超伝導体固有の渦糸構造の観察を試みた。 前年度までは膜厚の均一なアイランド構造での渦糸形成プロセスの観察を行ったが、今年度は、中心部に膜厚の薄い領域を持つアイランド構造での観察を行った。膜厚の薄い領域のピニング効果が期待でき、閉じ込め効果が強いことから渦糸クラスター状態や多重渦糸構造などが予測されるからである。蒸着条件を適当に制御することにより、そのような形状を持つアイランド構造を作成することができたので、磁場印加の下での渦糸観察を行ったところ、低磁場では膜厚の薄い領域に渦糸がピニングされるようすが確認された。さらに、ピニングされた渦糸の数が磁場とともに増えるにしたがって、膜厚の薄い領域の形状や薄さの程度によって渦糸がクラスター状態や巨大渦糸状態形成する過程を実空間観察することにも成功した。以前の研究における理論的な予想結果との比較から、今回の研究ではこのことを実空間観察により実証することができたものと考えている。 また、ある条件のもとで、パルス状のトンネル電流をアイランドに局所的に流すことによって、渦糸構造を誘起できることも見出した。アイランドが誘起される条件を測定することによりそのメカニズムを提起している。
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