Research Abstract |
1. 現有のスピン偏極走査型トンネル顕微鏡(SP-STM)内に電磁石を組み込み,GaN上に形成したFeナノ構造の磁区変化の観察を行った.蒸着量を制御して,超常磁性を示すFeナノ構造領域と強磁性を示す領域の共存状態を形成し,両者間の凹凸差の印加磁場依存性を調べ,印加磁場に応じて強磁性領域の磁化の向きが変化する様子を捉えることに成功した.この結果は,今後のスピン依存弾道電子マッピングを行う上での,スピン注入電極の磁化方向制御および測定に関した有用な知見を与えている. 2. GaN上に形成したFeナノ構造を酸化させると,Fe酸化物で覆われた表面を持つFeナノ構造が形成できることを見いだした.この構造体では,低温での磁化曲線で二重ヒステリシスループが観測され,表面のFe酸化物が反強磁性となり,内部のFeとの間に交換バイアスが働いていることとして理解される. 3. Fe/GaN試料に対して,弾道電子電流測定を試みた.その結果,従来のトンネル電流検出方法では精度の良い弾道電子電流測定が困難であることが分かった.また,実験結果は同時に改良指針を与えており,次年度改良する. 4. Gd濃度の異なるGaGdN薄膜をGaNテンプレート上に成長し,二次相の析出を伴わない成長条件,その時の磁気特性,結晶構造を調べた.得られた薄膜は,GaNと面内では格子整合しているものの,面直方向に格子が伸びており,歪んで成長していることが明らかとなった.また,低温でプレーナホール効果の測定に成功した.このことは,キャリアとGdの持つ局在磁気モーメントが相互作用していることの証であり,GaGdNはキャリア誘起強磁性であることを示し得た. 5. GaGdN/AlGaN多重量子井戸構造を作製し,その飽和磁化がGaGdN単層薄膜より大きくなることを見出した.
|