2009 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子計測用テラヘルツ帯コヒーレントラマン分光手法の開拓
Project/Area Number |
21360031
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
谷 正彦 University of Fukui, 遠赤外領域開発研究センター, 教授 (00346181)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 真理子 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (50521738)
山本 晃司 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 准教授 (70432507)
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Keywords | テラヘルツ / コヒーレントラマン / 生体分子 / 顕微イメージング |
Research Abstract |
1.時間領域コヒーレントラマン分光の信号対雑音比を改善するために,これまでの低繰返し(1kHz)のフェムト秒レーザー増幅器ではなく,高繰り返し(82MHz)のフェムト秒レーザー発振器を励起光源に用いてコヒーレントラマン信号の検出を行うための装置改善を行った。40倍の対物レンズ対を用いてCS_2(二硫化炭素,常温で液体)を励起し,逆ラマン及びラマン利得信号の検出に成功した。高繰り返しによる積算効果で信号は安定したが,コヒーレントアンチストークス散乱光は検出できなかった。今後,背景光等による雑音レベルを低減し,検出感度を改善する必要があると思われる。 2.また,分子固有のコヒーレントラマンスペクトル測定の障害となる非共鳴成分の抑制のために,周波数微分スペクトルを得るための技術開発を行った。時間領域コヒーレントラマン分光法では2つの周波数チャープした励起光を用いるが,2つの励起光の相対的な時間遅延Δτにより励起光のビート周波数(ラマン周波数に対応)が決まる。従ってΔτを変調することで励起光のビート周波数を変調することができる。そこで加振器を用いて薄いガラス板を一方の励起光の経路に抜き差しすることができる変調装置を試作した。動作確認のためテラヘルツ時間領域分光装置に組み込み,Δτ=0.23psを200Hz程度で変調できることを確認した。 3.一方,テラヘルツ時間領域分光法により酵素タンパク質の一種であるAscorbic Acid Oxidaseの固有状態及びその変性状態のTHz帯吸収スペクトルの測定を行った。固有状態と変性状態とではわずかな吸収の違いが確認され,それぞれの状態での水和状態の差を反映していると思われる。 以上のとおり,本年度は時間領域コヒーレントラマン分光の技術開発を行い,また溶液状態の酵素タンパク質のTHz帯吸収スペクトルを観測しタンパク質分子の水和状態についての有用な知見が得られた。
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Research Products
(4 results)