2011 Fiscal Year Annual Research Report
生物に学ぶ色素不要・高輝度・広視野角な構造発色体の開発
Project/Area Number |
21360033
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
齋藤 彰 大阪大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (90294024)
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Keywords | 構造色 / 応用光学 / 生物物理 / バイオミメーシス / モルフォ蝶 / 干渉色 / 発色体 / 大面積 |
Research Abstract |
本研究の目的は、モルフォ蝶の巧妙なナノスケール光学的構造をベースにした、新規な発色体の開発である。最大の特長は「干渉色だが広視野角で単色」という一見矛盾する物理特性であり、色素不要(省材料・環境対応)、高反射率、無退色など従来の発色体にない利点から広い分野で応用が期待できる。申請者はすでにこの特異な発色体を再現し、量産技術の開発に成功したが、実用には多くの未踏ステップが残る。当初の焦点は「色相制御」と「基板フリー技術」開発であるが、一昨年度、長らく懸案だった「鋳型基板の大面積化・高速化」で不測の展開により実現可能な流れが見えてきたため、急遽この課題への舵取りを行った(結果的に、この方向では実用に向けて最重要課題である「大面積・高速化」に大きな進歩があり、当初の予想外の収穫が得られた)。この際、当初は、大面積・高速化自体には成功し、正しく実現できた、と考えられたが、できあがった基板の光学特性に不足があるとわかってきた。時間をかけた解明の結果、不備の原因は基板の乱雑さ不足にある、と目星がつき、付加的な乱雑さの導入を行うことで光特性の改善が得られた。しかしその後、その改善がまだ不足と判明した。そこで次に、FDTDシミュレーションを用い、乱雑さの光学的効果に関し系統的な解析を行った。その結果、必要な乱雑さのパラメータ把握に成功し、所定の光学特性をもつ「大面積・高速化」が実現した。特性と「乱雑さの最適な作製」にはまだ詰める所が多々あるが、応用の最重要課題「大面積」「高速作製」の進捗ゆえ、基本的に舵取りの方向は正解であった。さらに、FDTDシミュレーションにより、当初の焦点の1つであった「色相制御」についても重要な知見が得られ、進歩があった(構造の乱雑さがスペクトル、ひいては色相に与える影響について定量的な解析結果)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)は当初の計画以外で本発色体の実用に向けた最重要課題である「大面積・高速化」に大きな進歩があり、当初の予想外の収穫が得られた。その際のFDTD解析の成果により「色相制御」も大きな進歩があった。
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Strategy for Future Research Activity |
本発色体の実用に向けた最重要課題である「大面積・高速化」について、かなり実用レベルに近づくことができたので、この方向の完成度を高める。「基板フリー技術」については現在の手がかりを元に薄膜化を進め、次に均一粉体化の技術を確立し、その上で、微小粉体の光学特性を測定するための技術を立ち上げる。その後、発色体の微小粉体の光学特性についてモルフォ発色が得られていることを証明する。「動的制御」については、現在得られている調査結果(材料・手法について)をもとに、Feasibility Studyとして足がかりを得る。
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Research Products
(20 results)