Research Abstract |
本研究の目的は,工学や社会科学の諸分野における最適化の理論と応用を「離散凸パラダイム」によって統合することにある.「離散凸パラダイム」の横糸は構造定理やアルゴリズムなどを代表とする数理であり,縦糸は諸応用分野における具体的な問題であり,その結び目の役割を果たすのがソフトウェアである.この目的の実現のため,「数理の深化」,「応用の開拓」,「ソフトウェアの整備」の観点から以下の通り研究を実施した. ・離散凸関数に対して錐劣加法性の概念を定式化し,L凸関数とM凸関数がこの性質を有することを示した,これによって,離散凸関数の制約付き最小化アルゴリズムとして,ヒルベルト基底に基づくものが設計できるようになった. ・簡潔な表現をもつため,理論的にも実用的にも有用な効用関数のクラスである「グラフで表現可能な」効用関数に関する財の配分問題を考え,この関数が劣モジュラ及び優モジュラであるための必要十分条件を与えると共に,いくつかの重要なケースに対する効率的かつ高精度な近似アルゴリズムを提案した. ・Hatfield-Migromの経済モデルを2者間の契約集合に半順序構造を導入することで一般化し,安定な割当の存在を示した.離散凸解析を用いた藤重-田村のモデルとHatfield-Milgromのモデルの統一モデル構築の研究の出発点となる成果である. ・劣モジュラ最適化の応用研究として,無線通信網における干渉効果を考慮した情報伝送に関するAvestimehr,Diggavi,Tse(2007)のADTモデルの一般化である,Schrijver(1978)のポリリンキング・システムを用いたフローのモデルを導入した.さらに,高速Fourier変換と劣モジュラ関数最小化を用いて,ADTモデルにおける最大流量を計算する効率的なアルゴリズムを与えた. ・離散凸最適化ソルバを公開し,ソルバを用いた予備品在庫管理アプリケーションや各種離散凸関数最小化アプリケーション等,離散凸パラダイムのデモンストレーションソフトウェアをWEB公開した.
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