2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21360045
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
室田 一雄 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (50134466)
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Keywords | 離散最適化 / 凸関数 / 双対性 / 劣モジュラ関数 / マトロイド |
Research Abstract |
本研究の目的は,工学や社会科学の諸分野における最適化の理論と応用を「離散凸パラダイム」によって統合することにある.「離散凸パラダイム」の横糸は構造定理やアルゴリズムなどを代表とする数理であり,縦糸は諸応用分野における具体的な問題であり,その結び目の役割を果たすのがソフトウェアである.離散凸解析の理論と応用を, 連続・離散軸, 凸・非凸軸, 分野横断軸,の3つの観点から整理することによって,個々の数理的技法や応用諸問題の相互関係を明確にし,数理の深化,応用の開拓,ソフトウェアの整備の3つの面で新たな展開を図ることが本研究の目的である.この目的の実現のため,(a)数理の深化,(b)応用の開拓,(c)ソフトウェアの整備,の3つの側面に応じて,研究を推進し,研究成果を発表した.本年度の具体的な成果は以下の通りである. ・M凸関数の連続緩和である凸閉包関数が効率的に計算可能であることを示した.これにより,M凸関数に関するNP困難問題に対する連続緩和手法が利用可能となった. ・整数格子点上で定義される関数に対してヘッセ行列の離散版を定義し,その行列が正定値であることと関数の凸拡張可能性の関係について議論を行った. ・一次の多項式行列である行列束に対して2種類の組合せ論的特徴量を自然な形で定義し,それぞれが離散凸性をもつことと,2者の間にルジャンドル双対性が成り立つことを示した. ・コールセンターのシフトスケジューリング問題に対する離散凸解析の応用について検討し,モデルの拡張を行うと共に,高性能な近似解法の提案を行った. ・前年度に引き続き,シフトスケジューリングなどの離散凸関数の応用に関する各種デモンストレーション,およびM凸関数最小化集合分割問題に対するソフトウェアを整備して,WEB上に公開した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,諸分野における最適化の理論と応用を「離散凸パラダイム」によって統合しようとする試みである.具体的な課題としては,離散凸解析の理論と応用を(1) 連続・離散軸, (2) 凸・非凸軸,(3) 分野横断軸,の3つの観点から整理することによって,個々の数理的技法や応用諸問題の相互関係を明確にし,新たな理論展開を行うことが目的である.本年度は,(a)数理の深化,(b)応用の開拓,(c)ソフトウェアの整備,の3つの側面に応じて,以下のテーマについて研究を推進し,研究成果を発表する計画であったが,いずれもおおむね順調に研究が進展している. まず,「数理の深化」においては,一般グラフ上のマッチング問題に内在する離散凸性を抽象すること,錐優加法性の意義をアルゴリズムの観点から明らかにすること, および劣モジュラ関数最大化の最近の進展を整理し,離散凸関数最大化問題への拡張を探ることが課題とされていたが,いずれについてもある程度の成果を得ることができ,一部については学会や論文誌で発表された. 次に,「応用の開拓」については,(オペレーションズ・リサーチ(とくに在庫管理問題)への離散凸解析の応用を研究する計画であったが,当初予定していた成果に加え,新たな進展を見ることができた.これについては次年度の課題となる.また,離散関数の不動点定理とそのゲーム理論への応用を研究する計画については,数理経済学者の協力を得て,興味深い結果を得た. 最後に,「ソフトウェアの整備」については,前年度までに引き続き,離散凸関数の応用に関するデモンストレーションを整備して,WEB上に公開することを実現した.本年度はデモだけでなく,ある種の最適化問題に対するソフトウェアの開発を進めることに成功している. 以上より,現在までの達成度はほぼ予定通りであり,研究計画は順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続いて,3つの側面に応じて,様々なテーマについて研究を推進し,研究成果を発表する.とくに,予定通りに研究が進んでいない部分については,重点をおいて研究を進める予定である.より具体的には以下の計画で研究を進める. まず,「(a) 数理の深化」であるが,行列束より一般的な多項式行列のもつ離散凸性に着目して,数値情報と構造情報の定量的関係性を明らかにすると共に,最短路問題や多品種流問題と離散凸関数最小化の関係を明確にする.次に,「(b)応用の開拓」においては,ゲーム理論における効用関数の最大化問題におけるM凸関数の意義を明確にする一方で,オペレーションズ・リサーチ(とくにスケジューリング問題)への離散凸解析の応用展開を図る.最後に,「(c) ソフトウェアの整備」においては,前年度に引き続いて,離散凸関数の応用に関するソフトウェアとデモンストレーションを整備して,WEB上に公開する. この研究の遂行のために,以下の連携研究者からの協力を仰ぐ予定である.まず,田村明久氏(慶應義塾大学・理工学部)には社会工学における離散凸性の研究をお願いする.岩田覚氏(東京大学・情報理工学系研究科)には,離散凸解析のアルゴリズムの設計において協力を仰ぐ.塩浦昭義氏(東北大学・情報科学研究科)には,連続変数の離散凸理論の研究を行っていただく.森口聡子氏(首都大学東京・都市教養学部)にはアルゴリズムの実現において協力して貰う.垣村尚徳氏(東京大学・教養学部附属教養教育高度化機構)にはソフトウェア整備の支援をお願いする.小林佑輔氏(東京大学・情報理工学系研究科)には,制約つき最適化の手法の検討をしてもらう.最後に,土村展之氏(関西学院大学・理工学部)には,アルゴリズムの開発と実現において協力をお願いする.
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Research Products
(22 results)