2011 Fiscal Year Annual Research Report
電子材料に用いるカーボンナノチューブの高密度電子流による損傷機構解明と強度評価
Project/Area Number |
21360046
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
笹川 和彦 弘前大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (50250676)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村岡 幹夫 秋田大学, 大学院・工学資源学研究科, 教授 (50190872)
巨 陽 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 教授 (60312609)
坂 真澄 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (20158918)
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Keywords | エレクトロマイグレーション / カーボンナノチューブ / 電子デバイス / 高密度電流 / 信頼性 |
Research Abstract |
昨年度までに解明した電流下カーボンナノチューブ(CNT)の損傷機構を踏まえ,次の項目の研究を実施し,強度評価法の構築とその実施に向けた基礎を固めた。 1.CNTの強度評価法の検討 電流下CNTの損傷機構として,エレクトロマイグレーション(EM)に起因した損傷が支配的であり,同損傷箇所で酸化による損傷が複合的に誘起されCNTの損傷が助長されることが,昨年度までにわかった。これを踏まえ,高密度電流下CNTに対する強度評価理論の構築を図った。EM損傷が支配的機構であるので,まず電子流による原子拡散理論に基づき炭素原子流束の発散量を求める理論式を導出し,これに酸化による蒸散に起因した原子発散量の理論式を加え,電流下CNTの強度評価パラメータの定式化を行った。これにより,CNTの強度に密接に関連した単位時間単位長さ当たりの炭素原子消失数を理論的に求めることができるようになった。 また,定式化した強度評価パラメータ理論式に基づきEMと酸化による蒸散の両方の損傷機構を考慮した,電流下CNTの初期損傷過程の数値シミュレーション手法を開発した。有限要素法による電流密度と温度分布の解析結果を同パラメータ理論式に入力することにより,電流下CNTの長さに沿った炭素原子発散量の分布を求めることができるようになった。 2.強度評価の実施-1 項目1で開発した数値計算手法により,作用電流量の異なる2種類の環境下におけるCNTの初期損傷シミュレーションを実施した。作用する電流密度の大小により損傷箇所が異なる可能性があることがわかった。また,本シミュレーション手法の開発により,作用電流と環境温度の違いを考慮して電流下CNTの寿命の概算評価と損傷箇所の詳細な予測を可能にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「1.CNTの強度評価法の検討」に関しては,当初の目標をほぼ達成している。開発した損傷初期のシミュレーションを断線まで拡張するのみである。「2.強度評価の実施―1」に関しては,評価に用いる物性定数の実験的導出を行う予定であったがこれを行わず,次年度に行う予定であった異なる動作環境における損傷形態の評価を先行して実施した。物性定数には文献値を用いた。これは,損傷機構解明に関し,動作環境による損傷機構優位性の変化を考察することの重要性が増したためである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究項目「CNTの強度評価法の検討」に関しては,損傷シミュレーションの期間を現在の損傷初期から断線にまで次年度の早い時期に拡張する予定である。項目「強度評価の実施」に関しては,物性値に文献値を用いた強度評価であってもある程度の精度の評価が可能であることがわかったので,次年度も当初の予定通り強度評価自体の実施に注力することとし,物性定数の実験的導出は実施期間内で時間的な余裕が生じた場合に実施する。一方,次年度は強度評価結果の実験的な検証も併せて行う予定であり,実験結果が評価結果と大きく異なる場合は,評価対象を用いた実験により物性定数の導出を行って評価精度の向上を図る。
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