Research Abstract |
本研究では,接着により接合した被接合材料のリサイクルを実現すべく,必要な時に剥がせる解体性接着剤の開発を目的としている.具体的には,接着剤に発泡剤を混入し,加熱時に生じる膨張力を利用して接着接合部の解体を図る. このため,発泡剤の膨張特性や熱的安定性,接着剤樹脂の弾性率,強度および粘弾性特性,並びに発泡剤周辺に生じる応力場の強度などが重要となる.平成22年度は,発泡剤として熱膨張性マイクロカプセルを取り上げ,この膨張特性を実験的に調べた.具体的には,本マイクロカプセルを静水圧中で加圧しつつ加熱できるチャンバーを試作し,これに顕微鏡を併用して,本マイクロカプセルの膨張特性を測定した. さらに,本実験により得られた膨張特性を用い,発泡剤周辺に生じる応力場の有限要素シミュレーションを,平成21年度に引き続き実施した.具体的には,発泡剤を接着界面に配置したモデルを考え,これを軸対称有限要素法により解析した.この結果,熱膨張性マイクロカプセル単体では,接着界面近傍にせん断応力が支配的に発生し,それに比べ,引き剥がし応力の発生が少ないことが分かった.また,このせん断応力では,接着接合部に界面剥離が生じないことが分かった。これらの問題を解決するため,複数のマイクロカプセルを相互に干渉させ,応力分布を変化させる手法を考案し,かつその妥当性を実験的に調べた.この結果,界面近傍に多量のマイクロカプセルを配置すると,膨張時の相互干渉により,引き剥がし応力が発生し,界面剥離が生じやすくなることが確認された.
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