Research Abstract |
生体吸収性高分子材料であるポリL乳酸(PLLA)は,力学特性に優れるために骨固定材料として使用されており,最近では再生医療における細胞培養のための足場材としても期待されている.足場材は細胞が増殖し組織を形成するために通常多孔質構造をとるが,骨組織の再生を試みる場合,多孔質のPLLAでは,強度や剛性が不十分である.そこで本研究では,補強構造を導入して力学特性を向上させることを試みた. 導入した補強構造は層状構造であり,3種類の層状構造の作製を行い力学特性を比較した.ひとつ目の層状構造は2層構造を成す足場材であり,外層は緻密で厚さ約200μmのフィルム状層,内側は多孔質構造を形成している.もう1種は,外層のフィルム状層の力学特性をさらに向上させるために,生体活性セラミックスであるハイドロキシアパタイトの微粒子を分散させた材料であり,内部はPLLAの多孔質構造である.3種類目は,外層を厚さ約2mmのPLLAの多孔質フレーム構造としたものであり,その空隙率は内部構造より小さくなっている.これら3種類の層状構造足場材と通常の単一構造の足場材の力学特性を比較した結果,フレーム層導入の足場材の圧縮強度は,単一構造の約2倍であり,さらにPLLAフィルム層導入の足場材の強度は,フレーム層導入構造の約2倍に上昇していた.フィルム層をPLLA/HApの複合材料とした足場材の強度は,さらに上昇した結果となった.骨芽細胞様細胞MC3T3-E1を播種し細胞接着性を評価した結果,各足場材においてよい接着性が確認できた.
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