Research Abstract |
平成21年度と22年度に得られた研究成果は,生分解性樹脂PLLAを基材としたコア・シェル型およびビーム補強型の強化構造型多孔質材料の開発と,骨芽細胞の石灰化活性を向上させることに成功したリン酸カルシウム系バイオセラミックス微粒子分散PLLA複合材料の開発であった.そこで,平成23年度は,リン酸カルシウムとしてβ-TCPを選択し,これら研究成果により確立した材料製作技術を用いて,強化構造型PLLA/β-TCP複合系多孔質材料の作製を試みた.その結果,力学特性に優れると共に細胞活性にも優れた新規骨組織工学用材料の試作に成功した.この材料は強化構造としてコア・シェル構造を採用しており,最終的な材料の破壊は,シェル層の座屈変形挙動に強く依存するが,有限要素法による3次元数値シミュレーションにより,本材料の変形メカニズムを詳細に再現することに成功し,変形メカニズムの解明に有用となる知見を得ることができた. 一方,より生体に近い組成を有する再生医療用材料の創製を目指し,代表的生体有機成分であるI型コラーゲンとリン酸カルシウム系β-TCPの微粒子を複合化し多孔質化した材料の作製を試みた.ラット間葉系幹細胞を播種し増殖・分化・細胞外マトリックス形成挙動等を調べたところ,コラーゲンとβ-TCPを複合化することで幹細胞が活性化され骨形成能が大幅に向上することが明らかになった.この研究によりコラーゲンとβ-TCPの複合化が骨形成用足場材料として有効であることが分かったために,β-TCPを焼結することで骨格構造を形成させ,その多孔質体にコラーゲンをコーティングする,あるいはコラーゲンの多孔質構造を導入する等のハイブリッド化材料の創製を試みた結果,新規複合系多孔質材料の試作に成功した.コラーゲンのハイブリッド化により,脆弱なβ-TCP多孔質体に構造安定性がもたらされ,弾性率や強度が大幅に向上することが示された.
|