2009 Fiscal Year Annual Research Report
電子輸送シミュレーションによるナノ構造電極のデザインと電気化学プロセスへの応用
Project/Area Number |
21360063
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
後藤 英和 Osaka University, 工学研究科, 准教授 (80170463)
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Keywords | 電子輸送 / 第一原理シミュレーション / インパルス・レスポンス法 / Direct Energy Minimization法 / 共鳴電子状態 / 表面ナノ構造電極 / 電気分解 / 電気化学プロセス |
Research Abstract |
本研究では、電気化学プロセスにおける電極表面と水分子との間で起こる電子輸送現象を、電子輸送特性シミュレーション手法によって解明する。特に、表面にナノスケールの幾何学的構造パターンを有する電極を用いたとき、電極表面と水分子との間の電子輸送が効率的に行われるために必要な「共鳴電子状態」を形成することが可能であり、そのとき水分子の高効率な電気分解が行われるという予測を実証し、水の電気分解など電気化学プロセスのための高効率電極としての「表面ナノ構造電極」の設計指針を示す。そのためには、ナノスケール構造体の電子輸送特性を正確かつ効率的に求めることが可能なシミュレーション手法を確立し、シミュレーションコードを作成する必要がある。そこで本年度は、これまでに申請者が研究・開発を行ってきた量子力学の第一原理に基づく電子輸送特性シミュレーション手法であるインパルス・レスポンス(Impulse-Response)法(IR法)をさらに発展させる研究を行った。具体的には、外部磁場下でのプロパゲーター(時間発展演算子)の実空間差分法による表現を解析的に求め、これをシミュレーションコードに組み込んだ。テストケースとして3次元ナノ構造体の負性抵抗現象のシミュレーションを行い、負性抵抗現象の発現機構を明らかにした。さらに、ナノ構造パターンにおける共鳴電子状態を正確に求めるためには、多電子相関の効果を精度よく取り込むことが可能な電子状態解析手法が必要であるため、多電子系の電子状態解析手法であるDirect Energy Minimization (DEM)法の開発を行った。テストケースとして、水素分子の電子状態シミュレーションを行い、基底状態の高精度計算が可能であることを示した。また、表面ナノ構造電極のモデルとしての2次元量子ドットの電子状態シミュレーションにも適用し、実用的な計算コストでの高精度シミュレーションが可能であることを示した。
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