2011 Fiscal Year Annual Research Report
電子輸送シミュレーションによるナノ構造電極のデザインと電気化学プロセスへの応用
Project/Area Number |
21360063
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
後藤 英和 大阪大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (80170463)
|
Keywords | 表面ナノ構造電極 / 電気化学プロセス / 第一原理シミュレーション / 電子輸送 / 多電子系 / 非直交基底 / 電子相関エネルギー / 共鳴電子状態 |
Research Abstract |
本研究では、表面にナノスケールの幾何学的構造パターンを有する電極を用いたとき、電極表面と溶媒との間の電子輸送が効率的に行われるために必要な「共鳴電子状態」を形成することが可能であり、そのとき高効率な電極反応が行われるという予測を電子輸送シミュレーションにより実証し、水の電気分解など電気化学プロセスのための高効率電極としての「表面ナノ構造電極」の設計指針を示すことを目的とした。そのためには、ナノスケール構造体の電子輸送特性を正確かつ効率的に求めることが可能なシミュレーション手法を確立する必要がある。そこでまず、量子力学の第一原理に基づく電子輸送特性シミュレーション手法であるインパルス・レスポンス(Impulse-Response)法(IR法)を発展させる研究を行った。具体的には、外部磁場下でのプロパゲーター(時間発展演算子)の実空間差分法による表現を解析的に求め、シミュレーションコードに組み込んだ。次に、ナノ構造パターンにおける「共鳴電子状態」を正確に求めるためには、相関エネルギーを精度よく計算することが可能な多電子状態計算手法が必要であり、空間Grid点上の物理量のみを扱うGrid DEM (Direct Energy Minimization)法とガウス関数基底セットを用いて高速計算を行うGaussian DEM法の開発を行った。共鳴ハートリー・フォック法の考え方に基づいており、多電子波動関数として非直交なスレーター行列式の線形結合を用いることで、少数のスレーター行列式で正しい基底状態を求めることが可能である。さらには、変分原理に基づく1電子波動関数の更新を行う際に、複数の修正関数を用いることを提案し、最急降下法よりも効率よく基底状態へと収束させることに成功した。しかしながら、実用的なシミュレーションコードとしてはさらに計算時間を削減する必要があり、本研究の最終目標である多電子系の電子輸送シミュレーションを行う「多体系インパルス・レスポンス(Many-Body Impulse-Response : MBIR)法」の開発には至らなかった。
|