2011 Fiscal Year Annual Research Report
高分子量化合物による固体表面分子集合体被膜のナノ・マイクロトライボロジー
Project/Area Number |
21360070
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
益子 正文 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (60111663)
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Keywords | トライボロジー / 走査プローブ顕微鏡 / 省エネルギー / 表面界面物性 / 潤滑油用高分子量耐荷重添加剤 |
Research Abstract |
高分子添加剤のトライボロジー特性発現は固体表面上への吸着分子膜生成により行われるがその形態は明らかではない.高分子化合物はその構造の複雑さゆえに分子自身の形態を同定することが困難であることから,本研究ではその吸着膜の形態解明の糸口を探るため,まず構造が既知の短鎖の化合物による分子膜を作成し,AFMを用いた表面分子膜のモルフォロジーおよびナノトライボロジー特性の測定を行った.さらに,我々が特別に設計・作成し,実際の潤滑条件下で形成したトライボフィルムの摩擦特性を解析するためのマイクロトライボメーターを用い,AFM測定で素性を明らかにした異なるモルフォロジーを有する数種の分子膜を用いて,そのマイクロ摩擦試験を行い,分子膜の形成・配向状態の相違がナノおよびマイクロトライボロジーの両領域における摩擦特性に及ぼす影響を解析した.短鎖のモデル分子にはoctadecyltrichlorosilane(OTS)を用い,表面粗さのきわめて小さなSiウエハーを基板に用い,表面吸着分子密度を変えて固定化し,モルフォロジーの異なるものを作成した.FT-IRによる官能基の定量分析,エリプソメーターを用いた分子膜厚さの計測,およびAFMを用いた形状像測定等から,分子密度の高い分子膜は均一な単分子膜を形成するが,分子密度が低い場合は海島構造の不均一形状を取ることが明らかになった.固体表面上の分子の配向状態と摩擦低減作用の関係を求めたところ,完全な均一膜が最も小さな摩擦抵抗を示すわけではなく,かえって配向性が少し低く,膜が柔らかな分子膜の方が摩擦抵抗が小さいことが明らかとなった.AFM測定用の固体表面上への高分子化合物の固定化は達成することができなかったが,上記結果より,分子膜の配向性が高くならない高分子化合物の吸着分子膜がかえって低摩擦を発現することが示唆された.
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