2011 Fiscal Year Annual Research Report
高硬度希土類酸化物膜の新しい創製法と希土類産業の開拓
Project/Area Number |
21360075
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大前 伸夫 神戸大学, 大学院・工学研究科, 名誉教授 (60029345)
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Keywords | レアアースメタル / 酸化物薄膜 / アークプラズマ / 原子状酸素 / 超高真空 / トライボロジー / 低摩擦 |
Research Abstract |
前年度までの研究結果から、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)の酸化膜が優れたトライボロジー特性を有することが明らかとなった。この中でも、S_<c2>O_3薄膜特性の特徴は低摩擦であり、CeO_2薄膜は高い耐摩耗性であることが判った。今年度はS_<c2>O_3薄膜を中心に研究を行い、酸化物薄膜組成、表面粗さ、ナノインデンテーション硬度、摩擦・摩耗特性を評価した結果、膜中のストイキオメトリ、ナノメートルレベルの表面粗さ、約10GPaの硬度、真空中で0.1程度の低摩擦を得ることができた。本研究の骨子である原子状酸素が現存する最も強力な酸化種であること、成膜を超高真空中で行うことによるコンタミネーションの排除がこのように優れた特性を有するS_<c2>O_3を創製できた原因であると考えている。また、S_<c2>O_3薄膜は大気中の水蒸気が過度に吸着すると摩擦係数が増大する傾向が見られた。そこで水蒸気の影響を除くため、ビームを原子状酸素から原子状窒素に交換し、スカンジウム窒化物(ScN)をS_<c2>O_3上に作製して複合膜を作製した。ScNについては研究例が極めて少ないが、今回は薄膜X線回折を用いて高い結晶性を有するScNが作成できていることを確認した。このようにして作製したScN/S_<c2>O_3複合膜は真空中のみならず大気中でも0.1を下回る安定した摩擦特性を示した。現在までにこのようなトライボロジーデザインや知見は全く得られておらず、本研究のオリジナルと評価することができる。ScやCeはむしろ地殻存在量の豊富な元素であり、かつ本成膜法は少量の材料で広範囲な成膜ができる技術であるので、今後工業的な応用が期待される。
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