2010 Fiscal Year Annual Research Report
巨大同位体効果にもとづくダイヤモンド半導体中のフォノンと電子物性に関する研究
Project/Area Number |
21360155
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
渡邊 幸志 独立行政法人産業技術総合研究所, ダイヤモンド研究ラボ, 主任研究員 (50392684)
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Keywords | ダイヤモンド / 同位体 / 超格子 / CVD / カソードルミネッセンス / エキシトン |
Research Abstract |
本研究では、マイクロ波プラズマCVD法による高品質なダイヤモンド単結晶成長技術を基盤に、原料ガスに同位体メタンガスを使用することでダイヤモンド結晶中の同位体組成を変更し、同位体ダイヤモンドの作り分けに成功した。この背景の中、昨年度は主に、結晶中の同位体純度と組成比の制御及びその評価技術を確立し、供給ガス混合比と結晶中の組成比との対応を検証した。さらに、作り分けられた^<12>Cダイヤモンドと^<13>Cダイヤモンドを交互に積み重ねた1次元超格子構造を実現するための成長条件探索を行ってきた。本年度は積層幅2nm(原子約20層)の成長技術をベースに、キャリアの閉じ込め効果の再現性を確認し、ホモ接合超格子としては世界で初めての挑戦となる超格子効果の実証の獲得を目指す。 一般的に超格子効果は電子のドブロイ波長程度にキャリアが閉じ込められたとき、キャリアの波動性が顕著に現れ、バルク結晶には見られない新たな物性の変化が期待出来る。ダイヤモンドの場合、電子の有効質量0.36を使用したとき、電子のドブロイ波長は計算より約24nm(80K)と見積もることができる。一方で、本評価装置の検出感度の制約から少なくても深さ方向に対して約1.6μm以上観測領域の確保が不可欠である。この実現のためには、超格子構造の形成プロセスを長時間安定に繰り返すことができる仕組みが必要となる。ここでは、その鍵となるガス供給のタイミングがプログラミング可能で自動制御できるシステムを構築した。これにより同位体ダイヤモンド超格子の形成技術を飛躍的向上させることに成功し、積層幅0.5nm3200層、積層幅1nm1600層の極限制御を実現した。様々な積層幅の超格子構造をCL法により評価したところ、キャリア閉じ込めに重要な物理量であるキャリア拡散長は約1umにも到達していることがわかった。また、ラマン散乱実験では、一次ラマンストークス線のピーク付近に新たなピークが観測された。積層幅に応じたピーク変化は、フォノンへの超格子効果を捉えた最初の観測結果の可能性がある。
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Research Products
(12 results)