Research Abstract |
本年度に行った研究を要約すると次のようになる. 1.広帯域量子通信路容量達成に関する検討 広帯域減衰通信路の容量に,波長分割多重とディジタル変調によって,符号長無限の極限でどこまで近づけるかを,離散化通信路容量を導出することで検討した.これは,無限の周波数の連続的な利用に基づく広帯域容量を,有限の周波数を離散的に利用した波長分割に基づく容量と比較したものである.その結果,受信エネルギーが小さい場合は,光領域のみの波長分割多重で,広帯域容量が達成されることを明らかにした. 2.符号化された任意元の量子信号に対する通信路行列公式の検討 本研究では,有限の符号長での具体的な符号化・復号化により,究極の伝送限界である通信路容量にどれだけ近づけるかを明らかにすることを目指している.このため,困難だった通信路行列の計算を効率的に行える通信路行列公式について,従来の素数元の成果を任意元に一般化した.これにより,実際的な2のべき乗元の量子信号が,符号化後に群共変という対称性を持てば,その性質を効率的に計算可能となった. 3.拡大体上と整数環上の符号により符号化された量子信号の相互情報量特性の比較 2で示した公式を適用するためには,符号化された量子信号が群共変的であることが必要である.実際的な2のべき乗元の符号として,拡大体上の符号が現在広く使用されているが,この拡大体上の符号は,符号化前の量子信号が群共変的なPSK信号であっても,群共変でない場合があることがわかった.また,拡大体上と整数環上の符号により符号化された量子信号の相互情報量の特性を比較し,整数環上の符号が量子通信においては優れている例を示した.
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